小日向京のひねもす文房具|第五十五回「中島重久堂の鉛筆削り器 531S」

第五十五回「中島重久堂の鉛筆削り器 531S」

削り穴に鉛筆をさし込み、鉛筆軸を自分で回して削る「小型鉛筆削り器」は、手軽に鉛筆を削り、芯を尖らせることのできる器具です。
ペンケースなどにポンと入れられ、携帯するのにも便利で、特に削りかすをためておける容器が付いたものは出先でも簡単に扱うことができます。
DUX(ダックス)、KUM(クム)、Möbius+Ruppert(メビウス+ルパート)など、ドイツの鉛筆削り器は名品揃いとして知られていますが、それらを凌駕する鉛筆削り器がこの日本にあるのでした。
そのメーカーが、大阪にある中島重久堂(なかじまじゅうきゅうどう)です。

「JAPAN NJK」と刻印のある刃がトレードマーク。中島重久堂は1933(昭和8)年、ダクトロイド樹脂でペン軸やパイプの製造を行ったことに始まります。そのダクトロイド樹脂の削り出し技術で鉛筆削りを作り始めたのが1940(昭和15)年のこと。戦後にはプラスチック射出成形機を自社開発し、日本で初めて射出成形による鉛筆削り器の製造を始めました。
その後国内文具メーカーのOEM商品製造で成長し、文具としての鉛筆削り器以外でも化粧品ペンシルの削り器を開発しています。
2015年に発売された鉛筆と鉛筆をつなぐ鉛筆削り「TSUNAGO」は、鉛筆削り器メーカーとして中島重久堂の名を広く知らしめた商品でした。

それもそのはず、OEM商品の製造が主流となっているため国内で「中島重久堂」の名を冠する鉛筆削りはごくわずか。その数少ない中島重久堂オリジナルの鉛筆削り器のひとつが冒頭写真の「531S」で、ナガサワ文具センターで購入することのできる逸品です。

第五十五回「中島重久堂の鉛筆削り器 531S」

この鉛筆削り器の特徴は、刃が長く、削り口が鋭角に削れる点。
鋭角な削り口は芯が長持ちして、削る頻度も少なくて済みます。
刃を見ると通常の小型鉛筆削り器と異なり、刃を容器に固定するネジが2つあります。
通常のものがネジ1つで固定されているのにたいして、この531Sがネジ2つ使われているというのはそのぶん刃が長いわけであり、それでは他のメーカーも削り口を鋭角にするために、刃を長くして2点固定したものをなぜ色々作らないのか…と思ったら、「それは大変難しいこと」なのだそうです。

前述の通り、中島重久堂は長年にわたり樹脂成形技術を極めています。鉛筆削り器は刃と同様に容器側の成形技術も命。少しでも受け皿の作りがずれてしまうと、刃がしっかりと固定されず、削り口がブレてしまうといいます。
加えて中島重久堂の刃も自社製で、薄刃の研ぎには妥協がありません。
長い刃で安定した鋭角な削り口を削れるのは、中島重久堂製ならではの成形技術+刃の製法技術の賜物なのでした。

通常の小型鉛筆削り器との削り口の違いは下の通り。▽
第五十五回「中島重久堂の鉛筆削り器 531S」

左が通常のネジ1点固定のもの、右がネジ2点固定の531Sです。
鋭角で長く、そして精巧!
機械式のハンドル手回し式鉛筆削り器と大差ないのでは? という削り口に惚れ惚れしますよね。

そして削り器のデザインも、直線と直方体を基調としていてクール。
フタにはガンメタリック、メタリックシルバー、メタリックコッパーの塗装が施してあり、削りかすをためておく容器にはスモークがかかっています。
スモークガンメタ…なんて、勧善懲悪の最強ヒーローが乗る車やバイクの雰囲気でかっこいい! そのデザイン性の高さも、中島重久堂製品の魅力です。

容器に削りかすがたまってきたところも絶景。▽

第五十五回「中島重久堂の鉛筆削り器 531S」

スモークごしに眺める削りかすもまた、良いものですね!

鉛筆削り器のオリジナル製品はほぼ海外で売られている中島重久堂ですが、刃の「NJK」刻印を頼りにOEM製品を見つけてみるのも、宝探しのようでまた楽しいものです。
刃から容器まで全メイド・イン・ジャパン。中島重久堂の鉛筆削り器で、切れ味冴える鉛筆使いを味わいましょう!

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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