小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第三十九回「URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日」

URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日

最近ナガサワ文具センターホームページのバナーや店頭で目にする「134周年記念 URUSHI JAPAN」。
パイロットの繰り出し式キャップレスをベースに、漆塗りの施された軸は美しいことこのうえなし。軸色には漆黒と朱があり、このブログを更新する現在は予約受付中で、まもなく2016年5月13日(金)に発売となります。

この5月13日の2日後、5月15日はナガサワ文具センターの創立記念日です。
1882(明治15)年5月15日、長澤力蔵氏が神戸市葺合区(現・中央区)で日用雑貨商「長澤紙店」を創業したことが始まりでした。
その後「ナガサワ文具センター」という社名となったのは、1960(昭和35)年のこと。
下は本店売場に飾ってある、「長澤紙文具店」と看板を掲げていた頃の写真です。▽

URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日

タイムマシンに乗って、この頃の店舗で買い物をしてみたい!
そしてこの頃の店員さんたちとタイムマシンに乗り直して、今の店舗を見ていただきたい!

さてこのナガサワ文具センター創立記念日に際して発売されるURUSHI JAPANの「134周年記念」という冠について。
ふつう「○○周年記念」の1桁目って、5や0など切りのいい数字にするのでは? と思われたかたもおられるのではないでしょうか。
それが、今回のURUSHI JAPANは13〝4〟周年という数字。
そこで過去の「○○○周年記念」を冠するナガサワオリジナル商品をさかのぼってみますと──。

133周年記念万年筆 黒柿 孔雀
132周年記念万年筆 六甲
131周年記念万年筆 翡翠
130周年記念万年筆 蒔絵螺鈿 神戸夜景
130周年記念万年筆 1882 シルエット

……なんと毎年「○○○周年記念もの」を出していた!!
特に記念すべき130周年には2本も。
さらにさかのぼってみましょう。

129周年記念万年筆 PenStyle memo.【改(かい)】
128周年記念万年筆 サヴィル・ロー
127周年記念万年筆 キングマドロス
PenStyle memo. SNOW WHITE(2008年限定カラー)
125周年記念万年筆 PenStyle memo.
124周年記念万年筆 マドロスⅡカンバーランド
123周年記念万年筆 MINE黒
122周年記念万年筆 PenStyle2004筆
121周年記念万年筆 PenStyle2003白磁/檸檬
120周年記念万年筆 創業120周年記念万年筆

…と続いていきます。
ペン先に風見鶏の刻印を施した創業120周年記念万年筆は、先代 長澤基夫社長の思いが込められた逸品で、50本製作したところ即完売してしまったのだそうです。
この120周年を迎えた2002年から、ナガサワ文具センターではオリジナル商品に力を注ぎはじめたのだといいます。

その120周年の年には現社長・長澤宗弘氏が五代目を世襲され、130周年である2012(平成24)年には新たに「社是(しゃぜ/会社の基本方針)が制定されました。
以下の社是です。

『文具・事務用品を
商社的発想にもちつつ、
当社人財を通じて文化と環境の高揚と創造に貢献する。』

一方、社屋に掲げてある以前の社是を見てみましょう。

URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日

力強い書は、書家・望月美里氏によるものです。
ここで両社是を見比べるに、現在の社是に加わった要素は「商社的発想を持ち」「社の者たちとその仕事を〝財産〟とし」「環境にも配慮をする」という点であり、ついては文具・事務用品を販売することのみならず、皆の毎日が楽しく充実するようなオリジナル商品も開発していこう! という表明ととらえることができます。

その理念通りに、例年数々のオリジナル商品を発表し続けるナガサワ文具センターなのでした。

併せて130周年には、「NAGASAWA SPIRIT 13憲章」が制定されています。
この13憲章は社員自らがつくり全社員に配布されているのだそうで、こちらの一部も社屋で目にすることができます。

URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日

この写真右側にある13憲章のひとつ、「楽しく働き 楽しく遊ぶ」の、

『人は、楽しい時間は早く感じ 苦しい時間は長く感じます。
同じ時間を共有するのであれば 楽しく感じながら職務を遂行した時の喜びを皆様と共有いたしましょう。』

という言葉に心うたれます。その通りですね!
人生には幸も不幸もあり得るところ、それが「幸せなことなのか不幸なことなのか」は自分の判断によるものとなります。世の何かしらの基準と照らし合わせて一喜一憂するよりは、知恵を駆使して自分基準で決めてしまうことが、結果周りの皆の喜びにもつながり、ついては「文化と環境の高揚と創造に貢献する」ことになるのだと考えさせられます。

この心の持ちようを、文房具好きのひとりとして今回の134周年記念URUSHI JAPANへ転じて思うに……。
「人は、欲しい文房具を買った時の財布の痛みはすぐに忘れ、買い逃した文房具にはあの時に無理をして買っていれば……という苦々しさを感じます。同じ無茶をするのであれば、買ってしまうのが一番じゃないか? そういたしましょう、そういたしましょう!」
となりそうで。
漆黒にするか朱にするか、はたまた両方にするべきか。頭の中をURUSHI JAPANがぐるぐる回転するこのごろです。

そのURUSHI JAPANについて。

URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日

URUSHI JAPANのキャップレスは、尻軸にあるノブを回転させてペン先を繰り出すタイプ。上の写真の○で囲んだ部分、回転ノブまでも漆塗りで仕上げられているのが、このURUSHI JAPANの特筆すべき凄いところです。
商品開発室 室長の竹内直行氏によると、このこだわりのために多大な労力を要したとのお話でした。
加えてもうひとつのこだわりが、ペン先の内側にも。

URUSHI JAPANとナガサワ文具センターの創立記念日

インク補充をする時にだけ見えるペン先の奥に、ナガサワオリジナルの鍵マークが刻印されているのです。ふだんは見えないところにこのようなさりげないひと手間が! 嬉しくなってしまいます。

漆軸のしっとりとした感触は格別なもので、手につややかなあたたかみが伝わります。
漆黒は「これこそが真の黒」というどこまでも深みのある黒で、朱は華やかかつ慎ましい漆ならではの豊潤な発色。
漆の回転ノブをひねるたびに、ナガサワ文具センターの歴史と理念が心へ彩りを与えてくれるように思います。

URUSHI JAPANの発売日である2016年5月13日(金)からは3日間、パイロットの土田真之氏によるペンクリニックが開催されるとのこと。

NAGASAWA PenStyle DEN
2016年5月13日(金)10:00〜18:00
2016年5月14日(土)10:00〜18:00

NAGASAWA 梅田茶屋町店
2016年5月15日(日)10:00〜18:00

調整はお一人様1本限りとなっています。
この機会に、足を運ばれてみてはいかがでしょう。
私もURUSHI JAPANを手にする日を心待ちにしています!

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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