小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第四十四回「フィッシャーマンズ・フレンド」

フィッシャーマンズ・フレンド

ナガサワ文具センターの梅田茶屋町店レジまわりや、神戸煉瓦倉庫店の売場コーナーなどで、よく目にするこのパッケージ。
ああ、あるある。うん、買った! というかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらは英国の「フィッシャーマンズ・フレンド」というミント系タブレットです。
お店で会計を待っている時、最後の最後でふと目にしたものに手がのびてしまうことがありますよね。このタブレットもそのひとつですが、きっかけはふと目にしたせいであろうとも、その淡い色をしたボタンのようなタブレットを口へ含むたび、強烈に効いてくる清涼感がじわじわと癖になり、たとえ当初は商品名を覚えていなくとも、繰り返し含むうちに「そういえばこれ、なんていう名前だったっけ?」とまじまじパッケージを見て、「フィッシャーマンズ・フレンド……うーん、忘れそう」となおも思ったにしても、その頃にはもう舌がこの味を覚えており、「あれ、あのあれ!」と忘れようにも忘れられない。
そんなミント系タブレットが、このフィッシャーマンズ・フレンドなのです。

製造元は、英国イングランド西北部・ランカシャーにあるロフトハウス社。
その歴史は1865年にさかのぼります。薬剤師のジェームズ・ロフトハウスが漁師のためにメントールとユーカリ油、リコリス(甘草)などを配合したシロップを作ったことがはじまりで、北大西洋に向かう漁師たちの喉の炎症を鎮めてくれるものでした。ほどなくしてシロップよりも持ち運びしやすいタブレット状が作られ、大いに好まれたそうです。
当時のレシピは代々伝えられ、現在もほぼ変わらぬ製法で作られているといいます。

オリジナル味は、冒頭写真の左側・白い袋に黒と赤の配色の「エキストラ・ストロング」。
この配色を見るにつけ、「こんな白に黒と赤で構成された筆記具やノートがあるといいな…」と思うものですが、なぜ白地に黒赤配色だったのかといえば「ひとつひとつ手作業でタイプライターを使い、ラベルに文字を打ち込んでいた」から。タイプライターのリボンは、黒と赤が半分ずつの幅で巻き取られていく造りをしており、黒のほうだけ使うのはもったいないから赤も使おう、と文字配色されたのだそうです。なんだか…すごくいい話ですね。

パッケージに書いてある「LOZENGES」とは、「トローチ」のこと。Lozenge(ロズンジ/ロゼンジ)は「菱形」を意味する英語で、特に喉の痛みや不快感を鎮めるトローチが古く菱形をしていたことから、喉飴そのものを指すようになったそう。角に丸みを帯びているとはいえ、菱形の飴というのはいかにも「効きそう」な感じがしてきます。

フィッシャーマンズ・フレンド

写真はパッケージ裏面で、このお買い上げシールが付くのもまた嬉しい!
小日向はナガサワ文具センターに行くと、必ずフィッシャーマンズ・フレンドを買い求めます。
自分の行動範囲の中で(東京も含め)、ナガサワ文具センターが一番間違いなくフィッシャーマンズ・フレンドを入手できるのです。よく求めるのは、神戸煉瓦倉庫店と梅田茶屋町店。
聞けばなんでも、ナガサワ文具センターのスタッフさんの中に「熱烈なフィッシャーマンズ・フレンドファン」のかたがおられ、在庫を絶やすことなく仕入れておられるのだとか。
以前にはn→エンヌ(現さんちか店)でも見つけられましたが、リニューアルしてからの取り扱いはないようです。さんちか店にも復活求む!

さてなぜ、文房具にフィッシャーマンズ・フレンドなのか。
ミント系タブレット全般において、そのパッケージのサイズ感はペンケース、小物ポーチ、果ては文房具を入れる鞄と相性抜群。自然と「文房具とタブレットが近くにいる」ことになり、特に書きものをしている時など「ちょっとリフレッシュしたい」と思うことが多いものです。
そんな時、これは実に強烈! 1粒でも大満足! 爽やかなミントやユーカリの風味が口いっぱいに広がります。昔ながらのレシピで、人工香料や人工着色料が使われていないのも嬉しいところ。ただし、5歳以下のお子さまは食さないでくださいとロフトハウス社のFAQにありましたので御注意を。
ひとしきり紙に万年筆のペン先をすべらせて、ひと息ついたら袋のジップを開け、1粒口にする…この時の気持ちの切り替わり感は格別なものです。
小日向は万年筆ではブルーブラックのインクで書くことが多いものですが、鮮やかなミントやターコイズ系のインクで文字を書く合間のフィッシャーマンズ・フレンドはまた、一段と清涼感も増すことでしょう。

もうひとつ、文房具に親しいタブレットだなと思えることは、すべて粒のなくなったあとの空き袋。この空になったジッパー袋が、出先で発生するちょっとした「文具ごみ」の収納に役立ちます。
ペン先のインクをぬぐったティッシュや、使い終えたインクカートリッジ、大量にまとまった消しゴムのかす、剥がしたあとのテープなど。
せっかくだから、そうしたものの一時の収納に使ってからごみ箱へと導きましょう。
袋まで使い切ったら、それが最後の清涼感。次の新たなひと袋へと進みます。

これは、漁師の友のみならず「文房具好きの友」と言っても良いもので!
いつもの買物とともに、フィッシャーマンズ・フレンドをひとつお試しください。

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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