幻の紫陽花と呼ばれる六甲シチダンカ
1820年代、江戸時代後期の日本に滞在していたドイツ人医師であり博物学者のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが日本で採取したシチダンカを標本として祖国へ持ち帰って、彼の著書「フローラ・ヤポニカ」に記載されましたが、それ以降、シチダンカは長いあいだ見つかることがなく、幻の紫陽花とされてきました。
そんなシチダンカが、1959年に当時六甲山小学校の職員だった荒木慶治さんによって、六甲山ケーブル駅近くで再発見されてから、六甲山を代表する紫陽花として広く知れ渡るようになりました。
今では、神戸市立森林植物園にある25種350品種とも言われる園内の紫陽花の中で、ひと足早く梅雨の訪れを感じる6月初旬から花を咲かせ、神戸っ子に季節の訪れを知らせています。
ナガサワ文具センターオリジナル万年筆「六甲シチダンカ万年筆」と紫陽花の花言葉
2024年8月に発売された、ナガサワ文具センターオリジナル万年筆「六甲シチダンカ万年筆」は、そんな幻の紫陽花シチダンカをインスパイアした万年筆です。
紫陽花の花は、土壌の性質によって色を変えるといわれ、酸性土壌では青色、アルカリ性土壌では赤色が強く花に現れる性質がありますが、「六甲シチダンカ万年筆」は古くから、高貴さを表す色として、日本人の感性に強く根付いている淡い紫をベースにしています。
紫陽花のように小さくてかわいい、それでいて上品で透き通るような花のイメージを万年筆全体で表現しています。
色が持つイメージの他に、紫陽花にはさまざまな花言葉があって、「移り気」「浮気」「冷淡」といったネガティブなイメージから「辛抱強さ」「元気な女性」といったポジティブな意味もあり「七変化」という異名まで持ち合わせる、バラエティ豊かな花でもあります。
紫を基調にした「六甲シチダンカ万年筆」は、「知的」「神秘的」といった花言葉の方が良く似合う万年筆といえそうです。
さらに、軸にちりばめられたラメは、梅雨の晴れ間の太陽が差し込んだ時の輝きを感じさせます。
初心者にも安心な「六甲シチダンカ万年筆」
紫陽花は夏の季語としても知られ梅雨を代表する花として知られていますが、「六甲シチダンカ万年筆」は、日常生活の中で毎日付き合える万年筆です。
初心者が万年筆と長く使いきれない理由のひとつに、うっかり机の奥に仕舞い込んでしまって、いざ使おうとキャップを開けると中でインクが乾いて筆記ができなくって、万年筆に対して面倒くさい筆記具として受け止められてしまうことがあります。
「六甲シチダンカ万年筆」には、2年放置していてもペン先が乾きにくいという「スリップシール機構」を搭載しているので、そんなうっかりさんをやさしくサポートしてくれます。
また、万年筆の数が多すぎて、インクが入ったまま忘れてしまいがちな、愛好家の人にも安心です。
これから万年筆ライフを楽しんで見たいけれど、万年筆は手間のかかる筆記具だと思っている初心者の方にも安心してオススメできる「六甲シチダンカ万年筆」です。
「六甲シチダンカ万年筆」と万年筆インク
今、ナガサワ文具センター各店をはじめ、全国の文具店の店頭には、神戸市立森林植物園にある紫陽花の品種に負けない数の万年筆インクが並んでいて、買ったばかりの万年筆に、はじめて入れるインクを考え悩むのも万年筆の楽しみのひとつですが、今回の「六甲シチダンカ万年筆」には、ベースとなったKobe INK物語No56「六甲シチダンカ」があるので、インクを選ぶ悩みからは解放されそうです。
気高く気品溢れる色のなかに、親しみやすさを持った「六甲シチダンカ万年筆」は、その日気分と向き合える万年筆として毎日の暮らしの中に寄り添ってくれる1本です。
筆者プロフィール
出雲義和・フリーランスライター
文房具を中心に様々なジャンルで執筆活動を行うほか、テレビやラジオにも出演。様々な視点で文房具の魅力や活用術を発信中。
works:雑誌書籍「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイド」「無印良品の文房具。」他、web「WEZZY」「マイナビおすすめナビ(監修)」他