オリジナル万年筆にその名を冠したオデッセイ
紀元前8世紀頃の詩人ホメロスの作といわれている「オデッセイ」は、古代ギリシア文学の最高峰「イーリアス」と並ぶ作品です。
といっても、私たちにはあまり馴染みがなく、オデッセイという言葉はこれまで耳にしたことはあって、それがギリシアを代表する叙事詩?と言われてもピンときませんが、2004年に公開されたブラッドピット主演の映画「トロイ」は、トロイア戦争を描いたホメロスの作品ですと聞くと、あっそれなら知っているという人がいるかもしれません。
また、コンピューター社会で知られる、マルウエア(悪意のあるプログラム)の「トロイの木馬」は、トロイア戦争で巨大な木馬の中に兵を隠して敵城内に運び込ませて、中から落城させたと伝えられる作戦に名前の由来があり、この作戦の考案者がオヂュッセウスです。
そのオヂュッセウスが主人公の物語が「オデッセイ」で、その登場人物は私たちにも馴染みがある名前が並びます。オヂュッセウスの妻ペネロペーは小惑星に名前がつけられ、ポセイドンは言うまでも無く海の神(オリンポス12神のひとり)としても広く認知されています。また、オヂュッセウスを助けるスクリアの王女ナウシカアは、有名なジブリ作品のヒロインの名前の由来にもなっています。
こうして見ると「オデッセイ」のストーリーは知らないけれど、登場人物には親近感を覚えてもらえるはずです。
近年であれば、2016年にマット・デイモンが主演してヒットした映画「オデッセイ」は、火星に残された主人公が過酷な環境を生き抜き、地球に帰還するという宇宙を舞台にしたSF作品ですが、観た人であれば言葉の持つスケールや壮大な冒険をイメージできます、そう「オデッセイ」には長く困難な旅、冒険という意味も持っています。
スノーホワイトから伝わるイメージ
Snow Whiteをいま流行のAI(人工知能)で検索すると”雪のように真っ白な色”と教えてくれます。また、紙の辞書「ジーニアス英和辞典」でも”雪のように白い、純白の・・・”とあり、デジタルとアナログどちらも同じ結論に至ります。
日本の伝統色では、雪色(せっしょく)雪白(せっぱく)ともいい、日本では、古くから神聖な色とされています。また、神主や巫女など聖職につくひとの装束や花嫁衣装が白無垢とされたことからも、白は汚れなき色として日本人の生活や文化に深く根付いてきました。
奇しくも、デジタルでもアナログでも、また欧米と日本でも同じ感覚、共通のメンタリティーを感じさせるのがこのSnow Whiteです。
そんな二つのネーミングを込めた、新しいナガサワ文具センターのオリジナル万年筆とは一体?ドキドキの興奮が胸におし寄せてきます。
ナガサワ文具センターオデッセイスノーホワイト
2024年11月に発売されたナガサワ文具センターオリジナル万年筆「オデッセイスノーホワイト」は、2005年に発売された「Pen Style 2005マイン」~私の万年筆~をオマージュした復刻モデルです。
残念ながら、ボクは2005年の「Pen Style 2005マイン」を見た事がないために、当時のモデルと比較することはできないのですが、「オデッセイスノーホワイト」を見た印象は、清潔・純粋・神聖など、高潔な印象を纏っています。
万年筆を手にして気付いたのは、天冠やキャップリングに文字や装飾などがまったくなく、従来の万年筆なら、たとえ小さくともメーカー名やロゴ、シリーズ名を記すシンボルなど、どこかに刻まれているものですが、この「オデッセイスノーホワイト」にはそういった自己主張がなく、筆記の際に視線を奪うものが存在しない点も特長的です。
これこそが”マイン”、自分の時間を大切に過ごすためのツールと呼べる唯一の主張なのかもしれません。
これ以上はないシンプルなボディラインは無垢の白、天冠とクリップ、尾栓にのみアクセントとしてアンティークゴールドの金属で締めることで感じるカラーバランスのなんと絶妙なことか。
2005年の「Pen Style 2005マイン」を、購入した人も、買いそびれた人も、また新しく「オデッセイスノーホワイト」と出会った人も、自分時間をより大切にしたいと思う人にぜひ使ってほしい1本です。
そう、SnowWhiteにはグリム童話の「白雪姫」の意味もあります、そんな思いめられているか?最後はハッピーエンドの物語、手にしたひとから幸せが訪れますように。
筆者プロフィール
出雲義和・フリーランスライター
文房具を中心に様々なジャンルで執筆活動を行うほか、テレビやラジオにも出演。様々な視点で文房具の魅力や活用術を発信中。
works:雑誌書籍「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイド」「無印良品の文房具。」他、web「WEZZY」「マイナビおすすめナビ(監修)」他