鉛筆のような六角軸に、ノック式のスマートなデザイン、そして「SWISS MADE」の文字。
1969年の発売いらい47年を経て今なお人気のボールペンが、カランダッシュ 849です。
この軸色には各種あって、売場を覗くと新たな色柄に出会えることもしばしば。
シンプルな外観にアルミボディが精悍で、上の写真のようなブルーやグレー、蛍光ピンクまで、どんな色みにもしっくりくるのです。
849でまず味わうべきは、そのノック感。やわらかく、ふかっとした感触で芯先がすべり出るさまに「ノックがこんなに奧ゆかしいものだったとは…」と感嘆します。
その静かなノック音も上品。会議や打合せの時にも、空間を邪魔することなく筆記に入れます。
そしてカランダッシュのボールペンの真骨頂は、そのリフィルであるボールペン芯です。
「ゴリアット(GOLIATH)」と呼ばれる油性ボールペン芯は、ステンレスチップとタングステンカーバイド製のボールが使われ、クリアでダマのない筆記を実現し、大容量のインクタンクを備えています。
リフィル1本分で書ける距離は、なんと8km!
専用ケースの内蓋に、その旨が記載されています。▽
この距離を、徒歩でのナガサワ文具センター巡りにたとえるならば。
神戸三宮駅を出発→北野工房のまち店→さんちか店→本店・PenStyle DEN→神戸煉瓦倉庫店→神戸国際会館SOL・La lettre de Kobe→もう一回北野工房のまち店に行こう…
……と歩きに歩いてようやく約8km。長い長い!
ときにボールペン芯の名称「ゴリアット」とは一体なんなのか、と思ってきたかたも少なからずおられるのではないでしょうか。私もそうです。
そこで調べてみました。
ゴリアットとは、旧約聖書「サムエル記上」に登場するペリシテの巨人戦士。日本聖書協会の『聖書』(旧約・1955年)では「ゴリアテ」と表記されています。
そのサムエル記上・第一七章を見ると…。
身のたけは六キュビト半。
頭には青銅のかぶとを頂き、
身には、うろことじのよろいを着ていた。
そのよろいは青銅で重さ五千シケル。
足には青銅のすね当てを着け、
肩には青銅の投げやりを背負っていた。
やりの穂の鉄は六百シケルであった。
とあります(抜粋)。この「キュビト」や「シケル」は古代の度量衡で、あらかた身長約3m、身のよろい50kg以上、やりの穂の鉄6kg以上、という凄まじいスケール!!
このゴリアテは結局「ユダのベツレヘムにいたエフラタびとエッサイの子・ダビデ」によって倒されるのですが、1対1での勝負を戦いの条件にするという潔さも持ち合わせつつ、この名は「強い影響力のある人・もの」のたとえとして使われるといいます。
つまり、カランダッシュのゴリアット芯は「大きなインクタンクと精巧なボール芯で長距離筆記を可能にした〝ぶっちぎりで凄い〟油性ボールペン芯」というわけです。
ボール芯をノックするたびに、最強の巨人が助太刀してくれているような心強さで記述に挑めそうですね。
その筆感は、めくるめくなめらかさ。
カーボン複写の時のように筆圧をかける時にはきっちりと、上のように原稿用紙に筆圧をかけずに速度筆記する時にはすらすらと、快適に書き進めることができます。
なにしろ8kmも書けるのでリフィル交換の時期は滅多にやってきませんが、軸色に合わせてインク色や字幅を変えたくなる時はあり、交換時にはノック部の金具をくるくると回して外します。
ゴリアットのインク色には、黒・青・赤・緑があります。
赤や緑の描線も実に素敵で…それらの紹介はまた別の機会にいたしましょう。
油性ボールペンにおける理想を兼ね備えた849は、折にふれて限定軸を発売しており、色柄違いで何本も求めたくなるのも楽しみのひとつです。
これからのクリスマス時期に向けて849 ボールペンの「クリスマスコレクション 2016」も順次入荷し、ナガサワ文具センターの売場に並びはじめました。
こちらは、オリーブブラック。
こちらは、パープリッシュレッド。
この2本にはそれぞれ48ページのノートとマグネット開閉式のノートカバーが付いており、ブック型のギフトボックスに収められています。税込5,400円。
小日向、オリーブブラックは間違いなく買います。こんなカーキ系の849を待っていました!!
どうもクリスマスギフトに向く商品のようではありつつも。自分にプレゼントするがいい、それがいい。
そんなクリスマスを例年過ごしているような気がいたします。笑。
849は手帳との組み合わせにもぴったりです。
鞄の中に、ペンケースに、胸ポケットに。新たな1本を加えてみるのもいかがでしょうか。
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。