「今年の手帳、何にした?」
「うん、今のところ○○○」
手帳好きの年始のやりとり常套句のなかでも、その返事に「今のところ」とか「現状」とか「やっぱり」といった言葉が加わると、ああ何冊か買ってあるなかから迷っていて、この先変わるかも知れないし、良いのがあったら増やしさえするつもりなんだな、と察します。
1月ならまだ間に合う。ひょっとしたらセール価格で見つけちゃうかも…という思いもよぎるものです。これさえあれば安心できる、という手帳と日々過ごしたいものですね!
小日向は第六十一回「来年の手帳選び─10月時点─」で書いた通り、2017年に使う予定のスケジュール手帳は能率手帳1 ニューレッドでした。見開き一週間・右側にノートページのあるタイプです。
はや10月には翌年の手帳を用意していたのですが、2017年を迎えてみたら、上の写真のシステム手帳 マイクロ5+月間表になっていたという。
月間表「になっていた」──あたかもそれが自然現象であるかのように表現するのも、手帳好きの自己防衛本能のひとつであり。
能率手帳1にする気まんまんだったというのに。人生なにが起こるかわからないものですね。せめて第六十一回のタイトルに─10月時点─と書いておいて良かった良かった。
しかしその能率手帳1(や要務手帳や懐中日記)を使わぬまま無駄にするのではなく、日付欄を合番号にしながらメモとして役立ってくれるため、良しとしたいと思います。
原因は、年をまたいで手帳を交換する時期に翌年の予定を書き忘れており、大切な約束を果たせなかったことにあります。手帳が悪いのではなく、私が悪いのです。
そのため、同じデザインをした手帳に予定を書き込むことができなくなってしまいました。
書き込もうとすると、脂汗が出てきます。血流の乱れ、動悸、めまい。
じゃ薬のめよ。という感じで、こんな経験は初めてのことでした。
週間表では、翌週の予定を知るためにページをめくる必要があります。
私はきちんとめくって確認しないのではないか。翌週も、ましてや2週先も、3週先も。
すっかり自分を信用できなくなり、「どうしたら嫌でも予定を書き込んで、先の予定も忘れないでいられるのだろうか、このならず者の私が」と考えました。
箇条書きにしたことは、以下です。
◆ 常に身体から一番近いところにあるもの、その状態にできるもの
◆ すぐに開いて書けて読み返す行動に自分を促すもの
◆ 一度開いた状態で多くの日付を俯瞰できるもの
◆ 新たな年の切り替え時期になっても無意識に連続して扱えるもの
◆ やるべきことを「今やろう」と思わせてくれるもの
…全部手帳頼み。
そしてはたと「エレンがあるではないか」と思い立ちました。
エレンとは、第七十回「アシュフォード エレン マイクロ5」に書いた、小さなシステム手帳です。
これをメモ記入に使うため常に身につけているのだから、ここへ月間表リフィルを混ぜ込んでみてはどうか? と考えたのでした。
ただし、マイクロ5はリフィルが天地105ミリ×左右62ミリという小ささです。
この見開き天地105ミリ×左右124ミリに入るような小ささの月間ブロックで、予定を記入しきれるのか。
しかし、予定を忘れるよりはいい。そもそも、自分は手帳に色々なことを記入しすぎていたのではないか? なんでもかんでも書いておいて大切な情報を埋没させてしまうより、むしろスペースが小さいほうが要点のみを書く習慣がつくのではないか。
喫茶店でそのようなことを考えながら、エレンを見つめたり、天井を眺めたり、手のひらを広げてじっと見たり、突然うすら笑いを浮かべたりする不穏な客と化していました。
そして購入したのが、冒頭写真のレイアウトの「アシュフォード 2017年版 月間ダイアリー(カレンダー式)No.2601-017」です。2016年10月から2018年3月までの18ヶ月分が入って400円+税。いたってリーズナブル!
また時を同じくして、エレンには趣味の文具箱オリジナル・ブルーコードバンのマイクロ5も知人と「同じものをプレゼントし合う」という名目で手元に加わっていました。このブルーコードバンのエレンは、昨年12月3・4日に開催されたNAGASAWA梅田茶屋町店での万年筆サミットで、売場に1点あった様子を御覧になられたかたもいらっしゃるかと思います。
エレン2種を並べると、このような感じ。▽
カランダッシュ849比。愛らしいことこのうえなし。
これらを取っ替え引っ替え交代させながら使えば、その愛らしさにつられて私もしっかり予定管理し、ついては約束を守り、日々健やかに仕事できるのでは。実にそう思えます。
2種なくても。ひとつあれば十分だったんじゃない。…という件については…。
そっとしておいてください。
月間表の小ささについては、予想以上に「なんら問題ない」ものでした。
自分は日付欄の1日の枠を3分割するような感覚で、「上部へ起きてすぐのこと、中央部へしばらく経ってからのこと、下部へ最後にすること」を書いています。それもこれまで通りにできて上々。
週間表の時には周辺へ様々な付随情報を記していましたが、絶対に必要なもののみ厳選して日付のない枠に付記。この月間ダイアリー(カレンダー式)No.2601-017は右側に箇条書きスペースがあるのも嬉しく、また月曜始まりというのも土日の予定をひとまとめにできて良いものだなと感じています。
そのようなわけで今年の目標は「スケジュール手帳で約束を遂行する」。
人との約束はもちろんのこと、自分との約束も含みます。
そして「要点を目立たせるために、書くことを減らす」ということも、スケジュール手帳については心掛けたいと思います。
そんな2017年のスケジュール手帳。また折に触れて、この場で使用状況を御報告いたしますね!
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。