「仕事ができると自負しているひとには、こんなシステム手帳を使ってほしい」と少々アグレッシブな意見を言ってくれたのは、筆者とは20年来になる友人。
彼女は、ブランド品が大好きだとか、文房具に特別な思い入れとかは全くないけれど、普段「先生」と呼ばれる人たちの中で仕事をしていて、口には出さないながらも、持ち物には大変目の肥えた人物で、執筆に際して客観的な意見が欲しい時に、頼りにしているひとりです。
今回「ファイロファックスウィンチェスターストーン」(以下、ウィンチェスターストーン)を見せたところ、こんな感想をいただいた次第です。
ライターという仕事をしていると、レビュー記事などを執筆する機会が多くありますが「これは素晴らしい商品ですよ」「これは絶対に買いです」という押し売り記事は、まず書きません。
必ず、どんな人にとってこの製品が相応しいのか、ユーザーを絞り込んで執筆するように心がけていますが、彼女のように「仕事ができるひとこそ使って欲しい」という、第三者目線の発想はありませんでした。
たしかに「ウィンチェスターストーン」は、オーソドックスなブラックやブラウン系のシステム手帳よりも、控えめでありながら、存在感があるグレーカラーは「できる大人」にこそ似合う気がします。
ナガサワ文具センター専売モデルカラー”ウィンチェスターストーン”
1984年代に日本に上陸して「システム手帳」という新しい文化の礎をつくったファイロファックス社の「ウィンチェスター」(当時はスタンダードという名称)といえば、黎明期から愛用してきたユーザーにとって、いつかは欲しいシステム手帳の代名詞で、万年筆に例えるなら「いつかはMONTBLANCのマイスターシュテックが欲しい」と思うのと同じ憧れが、この手帳にはあります。
その、ファイロファックス社から日本での発売40周年を記念して、往年のデザインを活かし、発売当時も大人気だったグレーカラーの「ウィンチェスターストーン」を復刻、ナガサワ文具センター専売モデルとして2025年2月に発売されました。
“ウィンチェスター40周年モデル“となる「ウィンチェスターストーン」の背表紙には、ファイロファックス社を表す”F”のエンブレムの刻印がおされ、最高級のイタリアンカーフレザーを贅沢につかった肌触りの心地よさ、手で持った瞬間に指伝わる確かな質感、コバをはじめ細部にまで丁寧な処理が施されて、システム手帳の高級車といった貫禄を感じさせます。
システム手帳歴40年の筆者が感じたこと
筆者が初めてシステム手帳を手にしたのは、今から40年以上も昔の話で、バイブルサイズよりひとまわり小さな手帳SD(システムデザイン)というブランドの8穴のモデルでした。
まだ、学生だったため、高価なモデルは買えませんでしたが、システム手帳という言葉の響きがすごくカッコ良くて、それを持っているだけで少し大人になったような気がして、ひとり悦にひたっていたことをいまでも覚えています。
そんな筆者が就職した頃といえば、手帳(ダイアリー)は毎年会社から支給されて、自分でお金をかけてまで購入する必要のない時代でしたが、東京本社に異動になり、大きな取引先を任されたときに上司からの指示もあって、改めて仕事のために革製のシステム手帳を購入、ビジネスではそれが大いなる武器になることを教わりました。
あこがれのシステム手帳
その時に選んだのは、オーソドックスなブラウンのシステム手帳でしたが、憧れていたのは、持っているだけで「仕事ができるビジネスマン」のシンボル的な存在だったファイロファックス社のシステム手帳でした。「いつかは欲しい」と思いつつも、当時の筆者にはちょっと高級すぎて購入するまでにはいたりませんでしたが、迷っている間に時間が過ぎていきました。
2000年台後半にスマートフォンが登場したことで、それまでのシステム手帳には必須だった”ダイアリー”や”住所録”といったページのかさばるリフィルが不要になり、鈍器のような厚いシステム手帳は段々とスリム化する方向に進んで、買い増しする度にリング径が小さくスリムなモデルが中心になっていましたが、その間もいつかはファイロファックスのウィンチェスターをいう夢は醒めることはなくて、この冬「ウィンチェスター40周年モデル」が発売されたこと機に、ついに手にすることができました。
今回のラインナップには、mini6サイズ15mm(リング径)・バイブルサイズ13mm(ベルトなし)・バイブルサイズ23mmが並びますが、近年スリムなモデルを使ってきたので、ここは大胆に大口径23mmリングをチョイスしました。
リング径が小さいモデルを使っていた頃は、綴じ込むリフィルは必要最小限に留めてきましたが、余裕のある23mmにしたことで、いろんなリフィルを遠慮なく挟み込んでいけるのは、ある意味快感に近いものがあって、かつての厚いシステム手帳を持ち歩いていた昭和の頃のビジネスマン気分も同時に味わっています。
お値段に関しては、決して「お手頃」と言いづらいのですが、これから数十年先まで使えると考えれば決して高価すぎるシステム手帳ではないと実感しています。
大人のシステム手帳
サラリーマンからフリーランスとして働くようになった現在、人生それなりに長く生きてきましたが、まだまだ勉強することも多く、自信なんてまだ持ち合わせていません。
そんな筆者でも、友人から「仕事ができる人ならこんな手帳を使ってほしい」と言わしめた、ファイロファックスの「ウィンチェスターストーン」を手にしたことで、本来の順番は逆かもしれませんが、臆せず胸を張って生きていける、そんな気持ちが湧いてきました。
なので、次回の(ちょっと豪華な)ホテル取材には「ウィンチェスターストーン」を携えて、”できる大人”として仕事に臨みたいと思います。
筆者プロフィール
出雲義和・フリーランスライター
文房具を中心に様々なジャンルで執筆活動を行うほか、テレビやラジオにも出演。様々な視点で文房具の魅力や活用術を発信中。works:雑誌書籍「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイド」「無印良品の文房具。」他、web「WEZZY」「マイナビおすすめナビ(監修)」他