大きいものから小さいものまで、あらゆるサイズが売場に揃うダブルクリップ。仕事をはじめ、日常のあれこれにも欠かせない文具です。
上の写真のように並べると、いっそう愛しさが募るもので…ダブルクリップのある世の中で良かった、と実感するものです。
ダブルクリップは1910年に米国のルイス・バルツリーによって編み出され、1915年に米国の特許を取得、その後デザインの変化は多少あれど現在まで同じ構造で作られています。
もう100年以上も人々に使われ続けているとは、凄いことですよね!
日本でも色々なメーカーが製造しており、あまりにも自然に文具のなかに佇んでいる存在ですが、あらためてじっと眺めていると実にスタイリッシュ。
基本型は、このように紙束をまとめる使いかたです。きっちりダブルクリップがはまった時など、本当に嬉しい。また、楽に開く時や固くて力が要る時の個体差があったりするのも「おお、これは当たり!」といった喜びを味わえます。
ツマミをまっすぐ紙束に沿わせると、ほぼすっきりまとまるのも良いところ。
時には、書類を目立たせるために「わざとツマミを折り返したままにしておく」ことも有効です。
ダブルクリップで束ねたものを2つ以上重ねる時には、上の写真のように綴じる場所をちょっとずらすと束同士がスムーズな重なりを見せてくれます。これを5束くらい綺麗に重ねられると、爽快なことこのうえなし。
こうしたダブルクリップ基本型の他に、皆さまも色々な使いかたをなさっていることと思います。
小日向の定番活用から、いくつか挙げましょう。
◆ ノートの栞にする
ここから書く、ここまで書いた、ここは大事、というところまでをまとめて挟んでおきます。
ぱっとノートをぞんざいに開くだけで目当てのページが出てきてくれるので、楽!
◆ 鉛筆につけて簡易ペンスタンドにする
これは鉛筆のなかでも、特にマーキングの役割に用いる赤青鉛筆でよく使います。鉛筆を挟むダブルクリップは、きつすぎず、クリップの内側側面が鉛筆軸に沿うように挟み込む大きさが向いています。
そのマーキングが別の色鉛筆だったり、主にインクで書いている時に補助として使う鉛筆だったりする時にも、ダブルクリップをつけておきます。
理由は「目立つこと」と「立体的になってくれること」。
ダブルクリップのツマミ2つを脚にすると、鉛筆の片方の端との3点で低めに自立します。赤青鉛筆なら、シーソーのように使うほうを上に向けたり、下に向けたりするのも楽しいものです。これが他のペンから持ち替える時に、わざわざ目を向けなくても立体感で察しがつくため、快適に記述が進みます。鉛筆を手にすれば、ダブルクリップが邪魔なこともありません。むしろ握りやすい感覚がするほどです。
◆ 引っかけて結合させる
ダブルクリップ単体でも、フックなどに提げておくのに便利です。これを「ダブルクリップにダブルクリップを引っかけて提げる」のも一案です。
たとえば上の写真のようなブックエンドにダブルクリップを挟み、ツマミを折り上げておくと、そのツマミがフック代わりになってくれます。
そしてそのツマミに、もうひとつのダブルクリップのツマミを通して結合。この時に、引っかけるダブルクリップはひとまわり大きいほうが、ツマミを通しやすいです。
ここへさらにもうひとつ下へ結合させる…ということもできて、なにしろ目立つため、やるべきことメモなどを書いて提げておくと忘れることもありません。
前述のダブルクリップをつけた赤青鉛筆や目立たせたいものを、ここへ引っかけても良いですね。
…といった風にダブルクリップには様々な使い途があり、あれこれ思案してみることは至福。
本当に愛らしい! 鞄のポケットやミントの袋などにも、いつもダブルクリップをはさむ日々です。
いつの日だったか真冬に喫茶店でコートを脱ごうとしたら、うっかりスカートをはき忘れていたことに気付いて真っ青。これ今日一日コートを着続けて過ごさにゃならんのか! となった時にも、ダブルクリップが書類のなかにあったおかけで、ストールを巻きスカート風にして留め、ことなきを得たことがありました。感謝。
これからも色々と助けてもらう場面が多いことに間違いはなく。毎日必ず身の近くに置いています。
ダブルクリップはこれから向こう100年後にも、人々から愛される存在でいることでしょう。
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。