もくじ
神戸発祥シリーズサイダー万年筆
神戸市中央区にある東遊園地の一角に、Alexander Cameron Sim(アレクサンダー・キャメロン・シム)の記念碑が建てられているのはご存知ですか?
Alexander Cameron Sim(以下、ACシム)は、スコットランドの生まれで、1870年(明治3年)ここ神戸の外国人居留地で薬剤師として働く傍ら、スポーツ選手としても各種の競技に参加し、同年神戸リガッタ・アンド・アスレチック・倶楽部(スポーツクラブ)を創設するなどの功績を残しています。
と同時に、薬剤師として働いていたレウェリン商会の事業を引き継ぎ、ACシム商会を設立、医薬品や香水石鹸などの輸入販売を手掛ける、アスリートであり実業家でもありました。
そして、当時の日本にはなかった、清涼飲料水「ラムネ」を販売したのも彼と言われています。
その頃はまだ、サイダーという名前ではなく、ラムネと呼称されていましたが、これは海外で人気のあったレモネードの誤訳によるもので、これがのちにサイダーと呼ばれるようになります。
サイダーの発祥地というのは、諸説あって、ACシムが神戸に来る以前に長崎の外国人居留地にいたことがわかっていますが、その長崎で京王元年(1865年)に誕生したという説の他に、神戸と同じく早くから海外との交流があった横浜説(年代不明)、明治元年(1868年)の東京説から、最近では関西ローカルのテレビ番組で京都府笠置(奈良県との県境)に鉱泉があって、ここでラムネが造られていた説まで飛び出して、本当に正確なところはわかっていないのが現状のようです。
当時、ACシム商会のあった外国人居留地18番にちなんで「18番ラムネ(サイダー)」が明治17年頃(1884年)に発売されて、そのハイカラさが日本人に受けいられて大ヒット、これがきっかけとなって全国に広がったという文献(「神戸はじめ物語展」神戸博物館編)という文献を見つけました。
そのほか、有馬温泉の炭酸水(鉄砲水)もまた有名で、明治8年(1875年)内務省大阪司薬湯の教師ドワルス(ドイツ人)が、杉ヶ谷に湧き出る冷泉をを分析したところ、浴用・飲用に適した炭酸泉であることが証明され、この炭酸水を瓶に詰めて販売が始まりました。
明治34年(1901年)には、有馬鉱泉株式会社が有馬温泉近くで炭酸鉄砲水をビン詰めにする工場が造られ、この他にも神戸周辺には標章登録されたブランド、被登録のブランドもあわせて、数多くの企業がサイダーの製造販売に関わっていたようです。
そう考えると、サイダーの普及に神戸が大きく貢献していたことは間違いなく、神戸発祥シリーズサイダー万年筆にも納得がいきます。
似合うインク
今回のナガサワ文具センター神戸発祥シリーズサイダー万年筆は、KobeINK物語とのコラボではないために、万年筆のベースとなるインクがありません。
筆記に際しては、ブルーブラックなりブラック、あるいはブルー系などお好みのインクを入れて使えばいいのですが、すでに複数本の万年筆を所有して日々の筆記を楽しんでいる人ならば、軸に合わせたインクをセレクトしてみたくなるものです。
そこで、NAGASAWA煉瓦倉庫店のスタッフと一緒に、サイダー万年筆に似合いそうなインクを試筆検証したところ、KobeINK物語#72「千苅ウォーターブルー」が選ばれました。
#72「千苅ウォーターブルー」
千苅(せんがり)とは神戸市の北限にあるエリアで、千苅貯水池と千苅ダムは神戸市の上水道を担う最大の施設となっています。KobeINK物語の「千苅ウォーターブルー」はそこから放水時に描き出される美しい水の姿を表現したもので、今回の神戸発祥シリーズサイダー万年筆にはぴったりの色合いといえそうです。
万年筆を買うとサイダーが付いてくる?
今回の、サイダー万年筆を購入すると、付属品としてコンバーターやインクカートリッジがパッケージに含まれるのは、これまでのモデルと同じですが、ナガサワ文具センターの各店舗で購入すると、この万年筆をイメージしたオリジナルのサイダーがノベルティーとしてもらえます。
飲み終えても記念に置いておきたくなる、もしくは飲んでしまうのが惜しいほどの可愛いラベルのサイダーです。万年筆同様、数量は限定なので、もし手に入れることができた人は、本当ラッキーですね。
残念ならが、オンラインショップでの購入は対象外になっているので、店頭に足を運んだ人だけの嬉しい特典になりました。
文具愛好家の考察
今年(2025年)は、例年よりも早い梅雨明けで、いきなり真夏のような気候になってしまい、自宅や職場で筆記をすることも億劫になりがちな毎日ですが、手にしているだけで、体感温度を2度〜3度下げてくれそうな、ナガサワ文具センター「神戸発祥シリーズサイダー万年筆」は、猛暑の季節にピッタリなクルービズ仕様の万年筆です。