子どもの頃から学校で慣れ親しんできた、黒板。
先生が板書きをするチョークのコツコツいう音や、たまに自分が書くことになった時の緊張感などが懐かしく思い起こされます。
日直当番になると、黒板の右側に日付と日直名を書いて、その日の黒板消し係をしたり、黒板消しを綺麗にしたり。
そんな黒板の思い出を手軽に甦らせてくれるのが、今回紹介するmtのマスキングテープです。
なんとこのマステ自体が黒板代わりになる!
貼ったところにチョークで、黒板と同じように書いて消せるのです。
色合いも黒板と同じ深緑色。上の写真では、第百十回で話題にしたあたぼう・Pen4lder(ペンホルダー)の裏側に貼って、日本理化学工業のダストレスチョーク・白で書きました。
昔はチョークを使うと指に白い粉がたくさんついたり、粉が飛び散ったりしていたものでしたが、昨今のチョークは書き味なめらかで粉末も気になりません。粒子を重くしているのだそうです。
またチョークの主原料で歯磨きにも使われている〈炭酸カルシウム〉に加えて、日本理化学工業のチョークには〈ホタテの貝殻〉が使われており、ホタテ貝殻再生活用の取り組みとして2005年から始まったことなのだそう。チョークもすっかり進化していたのですね!
黒板やチョークの雰囲気は好きだけど、なかなか暮らしに役立つ場面がないなあ…と思われるかも知れません。
そんな重い腰を、mtの黒板マステはフワッと浮き上がらせてくれます。
例えば適当な長さで切って、ドアに貼ると▽
備忘録メモになります。このドアを出る前に絶対忘れるな! という案件を記しておくのにぴったりです。
チョークと消すためのティッシュや布を、近くに置いておくと良いでしょう。小日向はこれを玄関のドア内側に貼って、チョークと小型の黒板消しを靴棚の上に置いています。
貼る場所は、洗面所でも、化粧室でも、台所でも、家族の集まる居間や自室でも良し。皆で共有すべき情報や覚えておくべきことを記すのに向きます。チョークで書くと、線が太くなり自然と大きな字になるのも、遠目に見える情報として視認度が高まり効果的です。
なんといっても黒板×チョークの描線で長年インプットされてきた「試験に出るかも知れない」という脳内記憶は、反射的に「それで書かれたものを覚えなければ/守らなければ」とスイッチが入る感覚があって、大人になっても効くものです。
また、大人になるとよく見かけるチョークの筆跡といえば、飲食店がありますね。
昔ながらの居酒屋にある「本日のおすすめ」も黒板に書いてあったりすると思わず文字に見入ってしまいますし、今どきのスタイリッシュなカフェに黒板が使われていたりすることもいっそう増えました。美しい欧文文字やイラストの描かれた黒板は、むしろチョークボードと呼びたい…などと感じます。
小日向は昨年秋の神戸ペンショー2017でコーナーをいただき、「飾り原稿用紙に執筆体験」イベントを行うさいに、何か看板があるといいなと思いました。
そこでナガサワ文具センター本店の画材売場へ行き、A3サイズの板パネルを購入。そこへmtの黒板マステを貼り、小型の黒板にしてみました。
書いたところはこのような様子です▽
右側の「飾り原稿用紙」の文字がなかなかうまく決まらなくて消し直しており、マステを並べて貼り継いでいるところがわかると思います。
こちらの製品は幅50mmですが、他に100mmの幅広のものもあって、このように板に貼って黒板化するようなら100mmは継ぎ目が少なくなって良いかも知れません。しかしこちら、継ぎ目がほとんど目立たないことと、消した時にうっすらと継ぎ目に残るチョークの白が「あたかも横罫線のよう」になって、ふんわりと浮かぶ線がなかなか魅力的でもあります。
そしてこのようにパイプ椅子に黒板を置いて、会場をめぐる方々の目に留まってもらうべく活躍したのでした。
黒板マステは、マステの筒の空洞部分に布の端切れやティッシュで巻いたチョークを収納して、ラップで包んだりジッパー袋に入れておいたりなどすると、持ち運びも簡単です。
黒板の機能を保ちながらも、黒板より柔軟に活用できるmt黒板マステは、懐かしさのみならず現代生活に向く使い方も多様です。
道具箱へチョークとともにひと巻き用意しておけば、随所で役立ってくれることでしょう。
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。