ナガサワ文具センターのスタッフ長田です。
マニアックになり過ぎず一般的な視点で『逸品』をご紹介させて頂く『逸品ブログ』。
今回ご紹介させて頂く『逸品』は、”サクラ クレパス”です。
≪サクラ クレパス≫
サクラ クレパスは子供の頃、ほとんどの方が一度は使用した事があると思います。
「なんで今さらクレパス?」
なんて言わないで下さいね。
しかし、知っているようで実は知らない描画材料でもあると思います。
「クレパスってそもそも何?」
「クレパスっていつからあるの?」
「クレヨンとは違うの?」
「クレパスってどんな風に使う画材?」
きちんと説明出来る人は意外と少ないのではないでしょうか?
今回はこの”サクラ クレパス”に焦点を当ててみたいと思います。
※ご紹介商品の中には、オンラインショップにてお取り扱いしていない商品もございます。
弊社の実店舗(本店)ではお取り扱いしておりますので、ご興味ある方はお問い合わせ頂ければ対応させて頂きます。
≪サクラ クレパスとは?≫
サクラ クレパスは、(株)サクラクレパスの登録商標です。
文字通り、(株)サクラクレパスを代表する商品です。
大正14年に当時の”櫻クレィヨン商會(サクラクレパスの前身)”が 子どもに親しみやすく、べっとり塗れて、のびのびと描くことのできる描画材料として開発されました。
当時、子どもたちが使う描画材料はクレヨンが主流でしたが、当時のクレヨンは今日のものと違ってかなり硬く、線描には向いていましたが、 面描には向いていませんでした。
また、昔からヨーロッパで使われてきたパステルは画面の上で混色が自由にできますが、白墨のように粉っぽく画面にしっかり付着しないので、定着液を吹き付けなければなりませんでした。
そこで、開発されたのがクレパスです。
“クレパス”とは、クレヨンとパステルの両方の長所をとった新しい描画材料という意味から名づけられた商品名です。
クレヨンのように画面に定着させ、パステルのように自由に混色出来るという、両方の長所をとった新しい描画材料という意味です。
このような経緯でクレパスは生まれました。
ちなみにクレヨンはクレパスよりずっと前、発祥はギリシャ時代まで遡ります。
ヨーロッパではとてもポピュラーな描画材料として使用されていましたが、今のものとは異なり、パステルや鉛筆、木炭など固形の描画材料の総称として呼ばれていました。
下の画像はサクラクレパス創立90周年を記念して昭和初期に販売されていたクレパス16色の限定復刻版です。
昭和初期のクレパスのデザイン、形状を再現しており、当時のクレパスに近い使用感を味わえます。
(ナガサワ文具センター本店にてお取り扱いしております)
≪クレパスとクレヨンの違いって?≫
クレパスとクレヨン、どちらも同じように扱われることが多いですが、実は材料の配合はほぼ同じです。
どちらも主な成分はパラフィンなどの蝋、滑りを良くするためのオイル、色を付ける為の顔料、炭酸カルシウムやタルクなどのにじみ止めと硬さ調整の、滑石と呼ばれる体質顔料の4種類です。
しかし、材料の分量が異なります。
クレパスのほうがオイルが多く含まれており、一方でクレヨンは蝋が多く含まれています。
この分量の違いが、書き心地(柔らかさ)が異なる理由です。
≪色名が変更された色がある?≫
一般的に人物を描くとき、一番良く使用する色は”はだいろ”だと思います。
販売された当初は入っていましたが、現在販売されているクレパスやクレヨンには”はだいろ”は入っていません。
しかし、色そのものが廃盤(廃色)になった訳ではありません。
現在は、”うすだいだい”として販売されています。
この理由は、様々な人種が地球には住んでおり肌の色は人それぞれ異なる為、”はだいろ”という名称は相応しくないと判断されたからです。
調べて見ると、サクラクレパスでは全ての商品が平成12年に”うすだいだい”変更されたようです。
≪クレパスは子どもが使っても安心な描画材料です≫
クレパスやクレヨンの箱を良く見て見ると…なにやら英語のマークが記載されていると思います。
“AP”や”CE”といったマークです。
これは簡単に言うと、”子どもが安全に安心して使用できます”という意味のマークです。
APマーク…ACMI(米国画材・工芸材料協会)により定められた評価基準に適合した、人体に対して害のない製品に付与されるマークです。
CEマーク…欧州連合域内で販売される、安全や健康を保護する安全規格に合致した製品に付与されるマークです。
サクラクレパス商品に関わらず、国内で販売されている子どもの使用が想定される描画材料には、ほぼこれらのマークが記載されています。
このマークが記載されていない描画材料には有害物質が含まれている可能性がありますので、子どもの使用は避けるべきです。
実際に、大人の使用を想定している絵具などには、カドミウムや鉛が使用されている事があります。
これは、これらの材料を使用しないと発色しない色がある為ですが、中毒の危険性がある為、チューブに危険性の説明がされています。
≪クレパスには大人向けの商品もあります≫
子どもの描画材料として開発されたクレパス。
しかし、発色の良さ、伸びの良さから大人が使用しても充分に楽しめます。
そんなあなたに!
オススメな商品がコチラ!
“クレパス スペシャリスト”です。
専門家向けのクレパスとして開発され、色数は全85色もあります!
高級顔料を使用し、発色や耐光性(色あせしない度合い)に優れています。
また、角型形状で、面塗りから線描まで対応できます。
単色も販売されていますので、ご興味ある方はぜひ一度使用してみて下さいね!
≪少し変わったクレパスの使い方≫
クレパスはオイルを多く含んだ描画材料とお伝えしましたが、一般的な名称は”オイルパステル”と言います。
オイルをたくさん含んでいますのでそう呼ばれるのですが、それを利用して面白い技法を一つお教えしたいと思います。
今回準備したものはコチラ!
・サクラ クレパス ・ホルベイン ペトロール ・ホルベイン KA画筆(豚毛・平筆2号)
今回これを皆さまにお伝えすべく、かなり久しぶりにクレパスを購入しました。
クレパスに限らず、新しいものを開封する瞬間ってワクワクしますね!
今回描くモチーフにしたのはコレ!
クレパスの箱に描かれているワンちゃんです!
ちなみに…私は全く絵ごころがありませんので、そこは大目に見て下さいね(汗)
それでは、手順をご説明します。
(1)クレパスで絵を描く
クレパスで絵を描きます。
特に特別な事はせず、”普通に”描きます。
思っていた以上に上手く描けました。
クレパス独特の伸びの良さも手伝って、こんもりとしている箇所もあります。
(2)ペトロールで先ほど描いた絵をなぞる
ペトロールを付けた画筆を使用し、クレパスで描いた絵の上をなぞります。
すると…なんと!クレパスが紙の上で溶けていきます!
少しオイル特有のニオイがしますので、充分に換気しながらご使用下さいね!
画像でもクレパスが溶けているのが分かると思います。
これは、ペトロールの成分で、クレパスのオイルが溶けることによって起こります。
オイルを塗ったにも関わらず、まるで水彩画のようになりました。
これで以上です。
簡単ですよね!?
ペトロールというのは、油絵を描く時に油絵具を溶かすオイルです。
油絵具は顔料とオイルで出来た絵具です。
水彩絵具のように水では溶けませんので、専用のオイルを使用して溶きます。
今回は、このオイルを使用して、オイルで溶ける性質を持つクレパスを溶かしています。
ちなみに、様々なオイル(画溶液といいます)が販売されており、それぞれ効果が異なります。
ナガサワ文具センターの本店でもこの通り。
種類や容量違いのものがたくさん販売されています。
もうひとつ、この応用編もご紹介!
これは本当に簡単です。
画筆にオイルを付けて、クレパスをそのままなぞるだけ。
すると、クレパスが溶けて筆に付きます。
あとはそのまま紙に描くだけです。
まるで水彩絵具のようですね!
≪クレパスの奥は深いんです≫
このように、クレパスは子どもの描画材料として開発され、現在でもたくさんの子どもたちに使用されています。
さらに、使い方や性質を理解すると、さらに発展した使い方が可能です。
今回ご紹介した技法以外に、火でクレパスを炙ると溶けますので、それを直接紙に押しつけることでオイルバー(油絵具が棒状になった描画材料)のように使用したりもできます。
ご興味ある方は、『オイルバー 使い方』などのワードでインターネット検索してみて下さいね。
子どもから大人まで使用できるクレパス。
身近にある描画材料にも関わらず意外と知らないことが多いクレパス。
今回ご紹介したことで使ってみたくなった方、ぜひ使ってみて下さいね!