小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第百四十回「ぺんてる サインペン」

小日向京のひねもす文房具|第百四十回「ぺんてる サインペン」

いつもどこかしらに置いてあり、手にするたび「いいデザインだな…」と見惚れてしまうのが、ぺんてるのサインペンです。
サインペンが発売されたのは、1963(昭和38)年。もう50年以上経つロングセラーなのですね。
つややかな素材、軸の太さと長さのバランス、軸からペン先へとなだらかに角度のついた握り口、そして丸軸のように見えて六角軸でもあるボディ、布地に線を引く時の道具・チャコのように側面の尖ったクリップ…どこをとっても時代を超えてスタイリッシュです。
水性インキを含んだペン先は書き味が良く、いつでも手軽に買い求められて、おまけに手頃な価格。
サインペンには数々の逸話もありますが、今回はそうしたこと以外の点で見てみましょう。

小日向京のひねもす文房具|第百四十回「ぺんてる サインペン」

全8色は、上のような色みです。写真はまだ左手で書く練習をしていた頃の文字で、たどたどしい形をしていますが、当時はここまで書ければ上出来でした。利き手ではないほうの手で書くと「良い筆記具」がすぐにわかるのだと実感し、サインペンがいかに書きやすいペンか再認識した次第です。

小日向京のひねもす文房具|第百四十回「ぺんてる サインペン」

こうした付箋へのToDoメモにも、サインペンはぴったり。その都度気分に合った色を選んでみるのもいいですね。ケース入りの5色セットは、すっきりとサインペンが収納でき、手軽に持ち運べて重宝します。

サインペンが発売された1963年から現在までに、世には数々の最新筆記具が登場しているわけですが、それらのなかでサインペンがいつまでも揺るぎない信頼を保っている理由は、その書き味と筆跡にあります。

《書き味》
◆ サクッとした感触のチップで紙の当たりも流れも軽快
◆ 手の側面を紙に当てても、紙から浮かせても安定した線を引ける
◆ 水性インキの出がほど良い
◆ さらに使い込んでインキが減ってくると、繰り返し書いて丸みを帯びたチップからフロー渋めに出るのもたまらなく癖になる
◆ 小さな字でも、大きな字でもコントロールをつけやすい
◆ 筆記音もサクサクと耳に心地良い

《筆跡》
◆ 線がくっきりしておりかつ濃すぎない
◆ 暗い場所でも線の視認性が高い
◆ 万年筆と同じような感覚で、あるいはそれ以上に、たいていの紙で裏抜けしない
◆ 《書き味》でのインキが減ってきた状態の、多少かすれた線がそれもまた魅惑的

と挙げれば多く、これらの利点を兼ねるものは未だサインペンしかないということにも、あらためて驚かされます。

「手の側面を紙に当てても、紙から浮かせても安定した線を引ける」点については、通常(特に万年筆で)筆記する時に手の側面を紙に当てて書き、段ボール箱やホワイトボードに文字を記す時には手を浮かせて書く、といったケースのことで、この双方でうまくいき、かつ使途も広い筆記具はそうそうありません。
この安定感にもペン先のチップがものをいっており、新しいものだけでなく使い込んだチップもまた秀逸なので、いい感じに丸みを帯びたチップになると温存しておき場面に応じて同じ色を使い分ける…ということもしています。

また「線がくっきりして視認性が高い」点については、薄暗い場所でサッと記述確認をする(小日向ならば、ライブハウスで演奏しながら曲の覚え書きを見るなど)という時に活躍します。
黒だけでなく、赤や青も組み合わせて記述を部分的に強調させるとますます視認性は高まります。

小日向京のひねもす文房具|第百四十回「ぺんてる サインペン」

上の写真は曲の覚え書きで、練習時などに書き足したりしていると、急いでいてキャップの色が入れ替わってしまうことも。
でも、この赤と黒のコントラストもなかなか良い?! と新鮮な見た目で、過去には8色のサインペンすべてのキャップと軸をかぶらないように組み合わせる方法も模索してみたりなどしました。

小日向京のひねもす文房具|第百四十回「ぺんてる サインペン」

これは楽しい!
時には色々と組合わせてみたくなりますよね。

サインペンはいつも私たちの暮らしに寄り添い、記述生活を助けてくれています。
こんなに優れたペンがある世の中にいられて良かった!
そう心から思える筆記具です。

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。

文字を書くことや文房具について著述している。

『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。

著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。

「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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