みなさんこんにちは!
ナガサワ文具センターのスタッフ長田です。
マニアックになり過ぎず一般的な視点で『逸品』をご紹介させて頂く『逸品ブログ』。
今回ご紹介させて頂く『逸品』は、”ぺんてる マルチ8″です。
≪ぺんてる マルチ8≫
『色鉛筆をよく使うけど、色ごとに持ち替えるのが面倒だな…』
『ペンケースに入れてコンパクトに色鉛筆を持ち運びたいな…』
なんて思った事がある方、意外と多いのではないでしょうか?
そんな方の悩みを解決してくれるツール、それが今回ご紹介する”マルチ8″です!
文房具屋さんはほぼ知っている、一般の方はほぼ知らない、こんな商品も珍しいと思います。
その名の通り、マルチに使用できる”マルチ8″は、3月3日の逸品ブログでもご紹介した”芯ホルダー”の仲間です。
(正確に言うと、ぺんてる社での分類は製図用シャープペンシルです)
一般的な芯ホルダーと同じ、直径2mmの芯が内蔵されているのですが、ただの芯ホルダーではありません。
8種類のカラー芯が1本にすべて内蔵されており、使いたい色を選んで使用することが出来ます。
≪マルチ8の使い方≫
色はボディに記載されている色名にクリップ部を回すことで選びます。
回すとカチカチと心地よい音がします。
使いたい色名のところまでクリップ部を回したら、ペン上部をノックします。
すると先端の三又のチャックが開き、芯が出て(落下して)きますので使いやすい長さだけ出します。
≪元々は子ども向けの色鉛筆だった≫
既に生産終了となっていますが1982年に発売された”プリズメイト”という商品があり、元々は子ども向けの色鉛筆という位置付けでした。
しかし、実際はクリエイターの方からの支持があることが分かり、1987年にマルチ8(PH801)として生まれ変わりました。
発売当初のマルチ8(PH801)は [ 赤 / 青 / 鉛筆(2B / B / HB / H) / ジアゾノンコピー芯 / PPCノンコピー芯 ] という8種類がセットされており、建築士やデザイナーの方向けとして発売されました。
その後デザイン編集に適した [ 赤 / 青 / 黄 / 緑 / 茶 / 橙 / ジアゾノンコピー芯 / PPCノンコピー芯 ] の8種類の芯がセットされたマルチ8(PH802)が発売。
さらに”本格派多機能筆記具”として [ 赤 / 蛍光ピンク / 蛍光イエロー / PPCノンコピー芯 / ボールペン(黒 / 赤 / 青) / 鉛筆(HB) ] の8種類の芯がセットされたスーパーマルチ8(PH803)が発売されました。
このスーパーマルチ8は1989年にグッドデザイン賞を受賞しているんですよ。
現在のラインナップは、マルチ8(PH801)が販売終了となり、マルチ8(PH802)とスーパーマルチ8(PH803)、そしてそれぞれの本体と替芯がセットになったタイプ(PH802ST、PH803ST)の4種類が販売されています。
≪替え芯のラインナップは全20種類≫
本体にセットされている芯を使いきると、もちろん補充ができます。
セット販売されている芯以外にも単色のみ販売されている芯があり、ラインナップは全20種類もあります。
ちなみに単品販売のみの色はコチラ。
スカイブルー / 紫 / ペールオレンジ / 黄緑 / 黒 / ピンク の6色です。
ボディに記載された色名とは異なってしまいますが、直接芯の色を確認できますので問題ありません。
≪ノンコピー芯?≫
このマルチ8、通常あまり目にする事がない色が2色入っています。
それはジアゾノンコピー芯とPPCノンコピー芯という2色です。
パッとみた感じは、ピンク色の芯と水色の芯なんですが、ノンコピー芯ってどのような用途なんでしょうか?
カタログには次のように記載されています。
・ ジアゾノンコピー芯: 青焼きコピーに写らないピンク芯
・ PPCノンコピー芯: 普通紙コピーに写らないブルー芯
若い世代の方は”青焼き”そのものをご存じない方も多いと思います。
そんな方も、青焼きは知らなくても青っぽい設計図をご覧になったことはないでしょうか?
製版フィルム(第二原図)を青写真感光紙に焼付けて作成する製版方法で、ゆがみのない原寸大等倍のコピーを作れる為に設計図など図面のコピーによく用いられていました。
その青焼きをするときにジアゾノンコピー芯を使用すると、書いた文字や線がコピーに写らない為にこのようなピンク芯を使用していました。
現在は製版工程のデジタル化に伴い、ほぼ大型インクジェットプリンタなどでの出力に変わってきています。
PPCノンコピー芯もいわゆるコピー(PPCコピー)で書いた文字や線がコピーに写らない為に使うものです。
メモや補足事項をこの芯で記入するとコピーされませんので便利です。
このような芯がラインナップとしてある事からも、建築士やデザイナーの方向けとして販売されているのがお分かり頂けると思います。
実際に書くとどんな色なのか、通常の赤芯と青芯、ジアゾノンコピー芯とPPCノンコピー芯を書き比べしてみましたので、色の違いをご覧頂ければと思います。
≪付属の芯研器、実は…≫
このマルチ8ですが、使っていくと当然ながら芯が丸くなってきます。
細かな字を書くときには芯研器を使用して芯を削ります。
一般発売されている芯研器を使用することもできますが、セット販売品(PH802ST、PH803ST)のみに付属している芯研器はかなりスグレモノです。
芯を芯研器に差し込んでクルクルと回すだけですが、ビックリするくらいに削れます。
実はこの芯研器、逸品ブログ TSUNAGO(つなご)でご紹介した、中島重久堂が製造しているんです。
中島重久堂というメーカーは、日本唯一のプラスチック小型鉛筆削り専門メーカーです。
様々な国内文房具メーカーの鉛筆削りをOEM製造しており、ぺんてるにも供給しています。
TSUNAGOのような優れた商品を作っているメーカーが製造を受け持っているのはとても安心できますね!
他にはサクラクレパスのクーピーペンシルに付属している鉛筆削りなども手がけているそうです。
マルチ8セットに付属している芯研器本体をよく見てみると…刃部分に”NJK”と刻印されているのが分かると思います。
NJK=中島重久堂 です。
目立たない小さなものですが、拘って作られているのがよくお分かり頂けると思います。
≪芯には”かしめ”があります≫
このマルチ8用の芯ですが、一般的なホルダー芯と異なるポイントがいくつかあります。
・ 長さが短い
芯の長さが58mmと短いです。(一般的なホルダー芯は約130mm)
・ 芯の後ろ(上部)には金属の”かしめ”がある
一般的なホルダー芯にはない、金属製のかしめがあります。(一般的なホルダー芯の一部には同様のかしめがあります)
この部品はホルダー芯を出す際に、勢いよく出過ぎて落下してしまわないようにしていると思われます。
実際にこの部分で一旦引っ掛かります。
≪ヨーロッパ仕様がある!?≫
マルチ8は日本だけではなく海外(ヨーロッパ)でも販売されています。
ヨーロッパでの名称は、品番がそのまま品名になっており”PH158ST1″と言います。
手元にヨーロッパ版のぺんてるカタログがありましたので、画像を撮ってみました。
日本ではなかなか手に入らない希少品なんですよ!。
日本では発売されていない商品がたくさん掲載されています。
少し話がズレましたが、このヨーロッパ版マルチ8″PH158ST1″ももちろん掲載されています。
カタログには1色だけが掲載されていますが、実は4色あります。
メーカーから入荷してくるとき、アソート(色込)で入荷してきますので、販売店も色を指定することが出来ません。
ですので、お客様もお目当ての色がある方は探すしかありません。
このPH158ST1、実は日本で発売されていた”プリズメイト”そのものなんです。
子ども向けの色鉛筆セットとして販売されているので、可愛らしいデザインとカラーリングなんですね!
現在、弊社での取扱いはない状況ですが、不定期に入荷してきます。
ご興味ある方は、たまにチェックして下さいね!
※画像はぺんてるヨーロッパからお借りしました。
≪現在では様々な使い方がされています≫
今回ご紹介したマルチ8は、元々は子ども用の色鉛筆として、そして現在はクリエイターの方向けに販売されているのが分かって頂けたと思います。
さらに最近では、手帳に記入する時に色分けして分かりやすく分類したり、思考・発想法の「マインドマップ」用として使用したりと、様々な使われ方がされています。
1本のマルチ8があればアイデア次第で様々な使い方ができる事、それが最大の逸品ポイントかもしれませんね!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
今後も『逸品』と感じた商品をご紹介していきたいと思います。
また次号をお楽しみに!
今回ご紹介しました ぺんてる マルチ8 は、公式オンラインショップでお買い求めいただけます。