小日向京のひねもす文房具|第七十七回「プラチナ万年筆 古典インク シトラスブラック」

小日向京のひねもす文房具|第七十七回「プラチナ万年筆 古典インク シトラスブラック」

来る2017年2月10日(金)、プラチナ万年筆から新色インク6色が発売されます。
その名も「古典インク〈CLASSIC INK〉」。
何が「古典」なのかといえば、その原料と性質に理由があり、昨今めっきり数の減った「鉄分が含まれ、その鉄分が紙に浸透し酸化されて、色変化して紙に定着するインク」が稀有なものだからです。
このタイプのインク色はブルーブラックが主流で、書いている時にはブルー→乾いたあと経年変化でブラックへとインク色が変化します。一度紙に定着すると水に流れ落ちにくく、光で色褪せることもないため、長期保存が必要とされる公文書などの記録書類に長年用いられています。
ただし通常のインクはほとんどがアルカリ性であるところ、このインクは酸性で、長く放置するような時には万年筆のペン先やペン先まわりの金属が錆びないよう気を遣う必要がありました。

近年では耐水性にも耐光性にも優れた万年筆向けの顔料インクが登場し、上のようなインクを作るメーカーは少なくなりました。しかしその美しい濃淡と色変化に魅せられる者は多く、その昔ながらの色変化を味わえる数少ないブルーブラックインクを「古典ブルーブラック」と称し愛用している現状なのでした。

そんななか、プラチナ万年筆がブルーブラック以外の色をした古典インクを一挙に6色も出すのですから、万年筆古典インク愛好家は文字通り色めき立つというもの。これは「古きの良さにたち返る」という驚くべき新製品です。

色名は以下のラインナップです。

カシスブラック
ラベンダーブラック
フォレストブラック
シトラスブラック
カーキブラック
セピアブラック

その色みを、ナガサワ文具センター企画アカウントのツイートで見てみましょう。

インクはそれぞれ60cc入り、各2,000円+税。
2月10日発売のところ、1月27日にオープンしたナガサワ文具センター パピオス明石店ではいち早く先行発売しており、オープン翌日の1月28日、小日向もさっそくパピオス明石店を訪れ1本購入しました。
それが冒頭写真の「シトラスブラック」です。

もう! 本当に! 6色全色欲しかったのですが、その時にはいつになく自らを厳しく律しました。
小日向A「家にまだインクはたくさんあるんじゃないのか」
小日向B「今、明石店限定のCOSMO BLUE 135も買うつもりでいるよ」
小日向C「でもこっちは、古典インクでしょう〜」
小日向D「しかも先行発売。6色いっときませんか、いっときませんかっ」
小日向E「だーめ。1色までだ!」
小日向F「えぇ〜そんなあああ」
小日向G「しずまれい。では色変化のわかりやすい、シトラスブラックにしてみましょうか」
…と、脳内会議。
それが本当に必要ならば、あらためて揃えればいいじゃないか。荷物も着いたそばから増えていることだし。そう決めて颯爽とレジへ。購入したものはインク以外にも色々ありましたが。もうパピオス明石店、最高でしたよ…。

小日向京のひねもす文房具|第七十七回「プラチナ万年筆 古典インク シトラスブラック」

こちらはアシュフォード マイクロ5のリフィル・2504に、ゼブラのGペンで書きました。
書いたそばからみるみる色が変わっていく!!
右から書いて、左下にぐるぐるっと走らせている筆跡が書いたばかりの色みです。
パイロット色彩雫「松露」インクのように、改行するたび乾いたインクの色みが変わるなあ…と驚いたものですが、その色変化の幅広さにはさらに驚き。シトラスな黄色がどんどん影を帯びていく。
「あっ書かれましたか、こんにちは…紙の上って、やっぱりボトルの中にいるよりも劇的に明るいですね…眩しいな…じゃいきますね…色変化、色変化」
とでも、インクがこちらへ語りかけてくれているようです。

そもそもインクの色変化の何がそんなに面白くて喜んでいるのか。
それは、インクとの対話にあります。
インクが生きていることを書きながらつぶさに感じ取れ、そこに自分の文字が形となって、インクとともに文章に向かっているような気持ちになれるからなのだと思います。

古典インクは書いた時だけでなく、こちらが書き終わってすっかり別のことをしている時にも、また新たな何かを書いている時にも、刻々とその筆跡を紙に定着させ、育て続けてくれます。

こちらは上の筆跡の時間経過です。▽

小日向京のひねもす文房具|第七十七回「プラチナ万年筆 古典インク シトラスブラック」

左上:書きたて
右上:2時間後
左下:8時間後
右下:24時間後

1〜2ヶ月を待つ間もなく、色みが刻々と変化していますよね。8時間後と24時間後はさほど変わっておらず、このあと月日をかけて変化していくことと想像します。

これは日の光に晒さず、普段通りに見たらページを閉じています。光に晒しておくとより早く変わるのでしょうけれど、そこは自分の都合──開いたまま置いておくことはそうない──によっています。インクと自分との「対話」のため。
追ってこの紙だけでなく、他に自分の使う原稿用紙や大学ノートなどにも試してみたいと思います。

そして今、心から痛感していること。
やっぱり明石で6色買っておくべきだった!
珍しく自己を律しようなどと、無茶なことをしてはいけませんね。
またパピオス明石店へ足を運びたいと思います。
そして2月10日の発売日を楽しみにいたしましょう!

今回紹介した商品はナガサワ文具センター公式オンラインショップでお求めいただけます。
「プラチナ万年筆 古典インク シトラスブラック」

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

小日向京のひねもす文房具



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