ぺんてるから昨年12月に発売された《アートマルチ8》は、透明軸に8本の色鉛筆芯が入ったマルチな芯ホルダー。クリップを回し、目当ての芯色の上に合わせてノックすると、その芯が口金から出てきます。
この1本を持ち運ぶだけで、8色を使い分けながら着色できる優れもの。
すでに発売中の《マルチ8》《スーパーマルチ8》も、軸に格納された8本の芯を選んで使うというメカニズムは同じですが、このたびの新製品《アートマルチ8》により「描く楽しみ」が加わりました。その変遷を、見てみましょう。
この8色芯が搭載された「マルチ8」シリーズは1980年代からのロングセラーで、これまで以下の年に発売されています。
①1982年 8色色鉛筆《プリズメイト》
→透明軸。その後海外仕様となり、日本では発売されなくなる
(上の写真、一番左は近年の海外仕様「PH158」です)
②1986年 製図家・デザイナー向けの《マルチ8》
→グレー軸に小窓から芯が見えるデザイン、小窓と小窓の間には色名が表示されている、軸に記された商品名には「Multi 8 PH802 for checking use」とあり
内蔵芯:赤、青、茶、橙、黄、ピンク、緑、PPCノンコピー
③1988年 事務用途に特化した《スーパーマルチ8》
→②とほぼ同じであるものの、②よりも少し濃いグレーの軸をしており、軸に記された商品名には「SUPER Multi 8 PH803 multi writing function」の文字があり
内蔵芯:赤、PPCノンコピー、HB鉛筆芯、蛍光イエロー、蛍光ピンク、ボールペン黒、ボールペン赤、ボールペン青
④2024年 気軽にアートを楽しむための《アートマルチ8》
→①と同じく透明軸、クリップとノック部はホワイト
内蔵芯:赤、青、茶、橙、黄、黄緑、スカイブルー、ピンク
③から36年の時を経て④へ。これほど長い間にわたり愛用者がいることも凄ければ、今なお新製品が出ることも凄い「マルチ8」シリーズなのでした。
海外仕様のPH158(旧プリズメイト)は、以前に香港の文具画材店「中南廣場(CN SQUARE)」で買いました。自分の見た店ではクリップがブラック、オレンジ、イエロー、ブルーとあって、ノック部はすべてイエロー。
説明書には「Pentel 8 colors automatic pencil」と製品名が示され、店頭では「8 colors lead mechanical pencil」とか、「8 colors -in-1 mechanical pencil」という表記もあり、ぺんてる香港サイトでは「PH158 多功能筆」とあります。
こちらの内蔵芯は、赤、青、茶、橙、黄、黄緑、スカイブルー、ピンクとなっており、④と同様です。
この透明軸が絵を描く時に、すこぶる使いやすい!
なぜならその時描いている絵に合わせて「あの色」「この色」と随時色を替えながら描きたい彩色では、芯全体が透け透けで完全に見えて直感的に色を選びやすいからです。
この透明軸をさらに芯色選びに集中できるよう、クリップとノック部をシンプルなホワイトにしたのがアートマルチ8というわけです。
アートマルチ8のラインナップは単品(8色芯入り)とセットの2種類。セットは上の写真のもので、単品仕様と同じ内蔵芯のアートマルチ8、専用替芯12色(各1本入り)、芯削り器がセットになっています。
上の写真がセットに付属の専用替芯と芯削り器です。
替芯は単体売りもありますが、そちらは2本入り。このセットの替芯は、1本ずつ入っています。すでに内蔵されている芯には予備ができ、さらに内蔵芯以外の色も入手できるのがセットの利点です。
セットの専用替芯の色は以下です。
内蔵芯と同じ色:赤、青、茶、橙、黄、黄緑、スカイブルー、ピンク
内蔵芯以外の色:黒、緑、ペールオレンジ、紫
付属の芯削り器で削った芯先はどのような形になるかというと、上の写真の左の通り。
右は出荷時の芯先です。
芯削り器での芯先は鋭角で尖らせられるため、細かい塗り込みに向くことでしょう。
そしてマルチ8を使って描いたものは冒頭写真をはじめ、上のような旅行日記が多いです。
やはり1本に8色が内蔵されているというのは持ち運びにも気軽で、着色もスピーディー。
アートマルチ8が加わって、ますます「今すぐ描いてみたくなる」気持ちが増しました。
ゆえに、旅行中のちょっとした合間に絵日記を描きつないでいく流れができています。
こちらの中央にある制服の絵の「冬服」のほうは、青と黒を混ぜています。
混色もすんなりいくのがマルチ8芯のまた良いところで、8色だけではなく、色と色を混ぜることで多彩な色を表現できるのが魅力です。
そのあたりの「アートマルチ8で描く時に行なうこと」について、次回は書きたいと思います。〔第百七十回に続く〕