この度の能登半島地震により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
また、被災地の一日も早い復旧を心よりお祈り申しあげます。

小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

カール事務器のエクスシャープナー(XSHARPENER)は、今年の初春に限定100個で予約販売された鉛筆削り器です。そのお値段、2万円+税。
限定100個・予約販売・2万円の鉛筆削り器という言葉に「ただものではない」感覚が漂うもので、小日向は現在発売中の『趣味の文具箱 vol.42』(エイ出版社刊)7ページにこちらの記事を書き、書くにあたっては現物を試さないと…と実際に削ってみて、なるほど本当にこれはただものではない鉛筆削り器なのだとしみじみ悟りました。
そして2万円という価格が、きわめて妥当だと感じました。むしろお得なのでは? と思うほどに、すっかり魅せられてしまったのです。

もう市場にはないのだろうか…とナガサワ文具センターに訊ねてみたところ、あっさり「在庫がございますよ!」との御返事。
えっ、あるのですか?! 購入します! と喜び勇んで取り置きをお願いしたのでした。
ナガサワ文具センターでは、これまでに梅田茶屋町店とPenStyle DENの店頭にエクスシャープナーの現物が並んだことがありましたが、それらも即日完売となっていました。
そんななか、オンラインショップにはまだ在庫があるとのこと。
カール事務器の技術の総力を結集させた、この貴重な鉛筆削り器を味わえる機会がまだ残されている今、そのエクスシャープナーの使用感を御紹介したいと思います。

エクスシャープナーは、軸径8ミリ、芯径3ミリの色鉛筆を、独自の芯先の形で精巧に削るためだけに作られた、手回し式の鉛筆削り器です。
カール事務器が推奨する「軸径、芯径ともに条件に合った色鉛筆」とは、三菱鉛筆の「朱通し No.2351」で、製品にもこの赤鉛筆が2本付属しています。
1本はあらかじめエクスシャープナーで削ってあるもの、もう1本はまだ削られていないまっさらのもの。
市販もされているこの赤鉛筆は、1本60円+税。

つまり…

60円の色鉛筆を削るために、2万円の削り器を作った。ということで…カール事務器の「本気」を感じます。いやはやすごい。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

削り器を手にすると、ずっしりとした重みが伝わってきます。素材はアルミニウムで、CNC(Computer Numerical Control)と呼ばれる精密切削加工で削り出された寸法精度は1000分の1ミリ。
普段、手回し式の小型鉛筆削り器を使うと痛感するのが「刃も大切だけれど、器も大切だ」ということです。たとえ良く切れる刃でも、その刃がぴったりとおさまる器でなくては、わずかな隙間で刃が曲がってしまい、うまく削り上げることができません。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

それがこのエクスシャープナーは! この鉛筆軸を挿す時点ですでに! 軸径8ミリのものが寸分違わず穴にはまり、内部の空気抵抗を感じながら「フーッ」とゆっくり入っていくのです。
その感触は、内部に組み込まれたシリコンリングの効果もあり。これが気持ち良すぎて、なかなか削るに至れません。鉛筆を抜き挿しするだけで満足して先へ進まない削り器が、かつてあったでしょうか。これは朝晩の瞑想時間に導入したい。
ここで刃の部分のカバー蓋を外しているのは、このあと生まれる削りかすが内部でつぶれてしまわないようにするためです。削りかすの形状チェックに余念がなく…笑。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

削ったところは、上の写真の通りです。まず1つ目の穴「Pre Cut」で木軸のみを削り、2つ目の穴「Fine Cut」で芯まわりの木をむく、という流れ。
2つ目の「Fine Cut」は一瞬の出来事で、チョッ! と刃が入ったあとには芯のみが残っているという鮮やかさ。一瞬の削りで芯のみを残すためにも、芯径は3ミリのものを厳守しなければなりません。
このダーマトグラフを彷彿させる削り口がカール事務器の開発した「カールカット」で、削っても、床に落としても折れにくい削り口を実現させています。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

箱にセットされている2つの付属品もまた、削り器本体と同様に優れた作りをしています。
こちらは替刃の入ったケース。中には「Pre Cut」用と「Fine Cut」用の2種の刃が3枚ずつ入っています。このケース、ちょっとした薬味入れにも良さそうな…つけペンのペン先を入れたい気もしてきます。夢が広がる。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

そしてもうひとつの化粧コンパクトのような姿をしたものは、芯研器です。
パカリと開くと…

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

内部にはこのような凹凸がついており、芯を垂直に当てて平たくしたり、また斜めに当てて角を取ったりすることができます。エレガント!

ここまでを体感すると、もはや2万円はお得だ…と確信する限りなのですが、せっかくなのだから、付属の三菱鉛筆 朱通し No.2351(また、色違いの青鉛筆「藍通し No.2353」)以外にも削れるものはないだろうか? と欲が出てきます。
そこで鉛筆売場を練り歩き、「軸径8ミリ・芯径3ミリ」をしたものの目星をつけてみました。
現在のところ、これらがエクスシャープナーでいけることを確認!▽
小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

◇ (付属の)三菱鉛筆 朱通し No.2351
◇ 三菱鉛筆 ポリカラー シルバー
◇ 三菱鉛筆 ポリカラー ゴールド
◇ 三菱鉛筆 ハイユニ 3B
◇ トンボ鉛筆 モノ100 4B

削りかすもあまりに愛らしかったので、並べています。
色鉛筆・ポリカラーについては、他の色は芯が3ミリ以上あり、向かないようでした。金と銀のみいくぶん芯が細く、エクスシャープナーに合致します。
ハイユニは、少し木軸が芯に残る場合もあるので、気になるようならカッターでこそげ取ります。2Bでは芯が細すぎ、4Bでは芯が太すぎました。
モノ100は、4Bの芯径がぴったり。
この調子で、他の合致する鉛筆も今後見つけていきたいと思います。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

そして肝心の書き心地と筆跡は。これが実に素晴らしく、上のような筆跡で、マーキングに向き、文字を書いても抑揚のある印象的な描線を味わえます。
垂直に立てればふんわりした色みが出て、傾けて紙にすべらせるとキリッとした縦太・横細な描線に。落としても折れにくい削り口であるために、筆圧をかけても芯が木軸に支えられ安定した線を描けるのも良いところです。
これは鉛筆の楽しみをぐっと広げてくれる書き味です!
定番鉛筆削り器のひとつに加わりました。

…とここではたと気づき、そういえば日々使う赤青鉛筆・三菱鉛筆 朱藍 5:5 六角 No.772」はどうなんだろうと削ってみたら。

小日向京のひねもす文房具|第九十七回「カール事務器 エクスシャープナー」

こちらもいい感じでいけました!
嬉しすぎる…感涙です。

ナガサワ文具センターにはいくつかのオンラインショップがありますが、そのひとつ「公式オンラインショップ」では、こちらにエクスシャープナーの扱いがあります。

とはいえ数には限りがありますので売切御免。
ぜひこの機会をお見逃しなく!

◆ナガサワ文具センター公式オンラインショップでご購入いただけます。
「カール事務器 エクスシャープナー」

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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