ナガサワ文具センターでチェックを欠かせないオリジナル商品にはまず「Kobe INK物語」がありますが、同じくらいに見逃せないのがキップレザーのペンケースです。1本・3本・5本・7本・10本差しと多彩な定番ラインナップで、万年筆をはじめとする筆記具の持ち運びに使わない日はありません。
そのペンケースに限定色が出るとわかった日には…仲間うちで「発売日開店時間に行ける?」「午後いちになっちゃう」「じゃ俺にまかせろ!」といったメッセージが駆けめぐり…いざ出陣。となるのでした。
そんななか、今年11月末の神戸ペンショーでは「オリーブグリーン」が。
翌12月初めの梅田万年筆サミットでは「東遊園地トーチオレンジ」が。
2週連続で限定発売になったのだから大変だった!!
何が大変って心構えが。売り切れてしまったらどうしよう、何時に起きて出発すべきかと、手にするまでは一時たりとも安心できないのです。
ひねもす文房具では第六十三回に、過去の限定キップ 3本差しペンケース2種の話を書きました。
この話での限定色は、エメラルドグリーンと王子チェリー。その後これまでに、santicaポートブルーや六甲アイランドスカイなども無事ゲットしてきたものの、増やせばまた次が欲しくなるというときめきの連鎖なのですよね…。
ここでも各種サイズのなかから、3本差しSを2種紹介します。
神戸ペンショーで発売されたオリーブグリーンは、これまでのキップレザーペンケースと同じデザインでも革素材が異なるもの。こちらの革は、イタリアのmastrotto(マストロット)社発売の「ADRIA(アドリア)」というシリーズなのだそう。
ソフトシュリンク加工が施された革の質感は、キップレザーがほんのり肉厚になった手触り。
上の写真では中央にパイロット キャップレス万年筆を、片側にヴィンテージのパーカー デュオフォールド ペンシルを、もう片側にカランダッシュ849ボールペンを入れており、細軸のペンもしっかりホールドしてくれます。
シックで洗練されたオリーブグリーンは、重厚感あふれる軸にも、ポップな色みの軸にもぴったり。小日向は服装アイテムにオリーブグリーンを選ぶことが多いのですが、黒よりもやわらかく、茶色よりも明るい色みは、着合わせの幅が広がります。ラメ系を合わせればアグレッシブに、白を合わせればフレッシュな印象にも表せて、応用の利く色だな…と感じることしきり。色名通り、オリーブの実や葉のような色をしているのも活力が湧いてきますよね。
続いて東遊園地トーチオレンジは、扱い慣れたいつものキップレザー。
Kobe INK物語 第63集のこの色は、神戸市役所の南側、震災復興・慰霊のモニュメントが置かれた東遊園地にある、被災10市10町をめぐって運ばれた種火と47都道府県から寄せられた種火を灯した「希望の灯り」がモチーフとなっています。
あたたかさに強さを秘めたオレンジは、勇気を与えてくれる色です。
こちらには中央に中屋万年筆 シガー 十角ツイストを、片側にhelico別注軸を、もう片側にプラチナ万年筆 センチュリーを入れています。
3本差しペンケースのSは長軸ペンにはちょっと短いサイズで、中屋万年筆 シガー 十角ツイストやプラチナ センチュリーは天冠部が少しはみ出ます。このはみ出た部分がまた抜き差しするのにちょうど良く、そして短めの筆記具はしっくりおさまって、長短両方に使えるのが便利なところ。そのため3本差しの「限定色などで増やしていく用」には、意識してSを選ぶことが増えました。
2つを並べると、これがまたぴったりの組み合わせ!
オリーブグリーンのほうは、筆記具の軸径や色みを御覧いただくために中身も少し出してみました。
3本差しの良いところは、幅がだいたい手帳くらいにまとまり、鞄の中でのおさまりも良く、3本単位で少しずつ増やしていける点です。(それを「少しずつ」と言えるのかどうかはさておき)
小日向はたいてい3本差し2つ=6本までを持ち歩いていますが、多くなると4つくらいになることも。5本・7本・10本差しとの合わせ使いにも便利です。
NAGASAWAオリジナルペンケースと、良いクリスマスから年末を迎えましょう!
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。