小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第百五十三回「プラチナ万年筆 PROCYON(プロシオン)」

小日向京のひねもす文房具|第百五十三回「プラチナ万年筆 PROCYON(プロシオン)」

#3776センチュリー、出雲、プレジール、そしてプレピーなど多彩なシリーズを持つプラチナ万年筆に、新たなブランドが誕生しました。
それが「PROCYON(プロシオン)」です。

この名の由来や、今回発売となった万年筆の特徴については、NAGASAWA PenStyle DENによるブログに詳細が綴られており、そちらをお読みいただくと実によくわかります。
#3776センチュリーで大きな話題となったインクが乾かないスリップシール機構に加えて、新たな作りのペン芯や、かつて日本初の形状として1962年に発売した五角絞りのペン先がPROCYONには用いられており、アルミボディに特殊塗装が施された軸の質感も極上です。

開発に5年の歳月を要したというこちらの万年筆は、聞くところによると、文具店の営業担当宛に丁寧な解説動画がプラチナ万年筆から届いた新製品なのだとか。
販売前にはPROCYONのすべてを動画で把握してください、というなみなみならぬプラチナ万年筆の心意気が感じられます。

プレピーをはじめ、プレジール、そして#3776センチュリーなど、ふだんからプラチナ万年筆を愛用する人たち(=私たち)にとって、おそらくその本数は1本だけでは済まなかったことでしょうし、かくいう私もセンチュリーはそろそろ10本目になったかな? というところで、

またさらに増やすのも自己嫌悪に陥りそうだからどうしよう

と思いながらのPROCYON新発売の一報でした。
だが!
いつもの通り万年筆売場を通りかかると、自然と新製品が目に入ってくるものです。
ショーウィンドウに並ぶPROCYONの現物を見れば、その存在感に驚かされ。
横に添えてある試筆用紙とサンプルの元へ流れのままに移動。
そして試し書きをすれば、プラチナ万年筆のペン先に共通するキリッと冴えた線を味わえつつも、他のシリーズとは明らかに異なる独自な書き心地!!
…というわけで、即購入決定。字幅・軸色選びに移りました。

小日向京のひねもす文房具|第百五十三回「プラチナ万年筆 PROCYON(プロシオン)」

細字(F)・中字(M)2種類ある字幅のうち今回は細字のFにして、軸色はディープシーを選択。

ペン先はステンレス製ということもあいまって、ぱっと見「プレピーやプレジールと同じ?」と思わせる形をしていますが、よくよく見ると、五角絞りの側面からペン先先端までがとても長く、これは文字を書く時の筆圧変化に反応してくれるだろうな…と期待させられます。

そして、写真左にあるカートリッジインクも見逃せません。こちらは初回製造ロット限定で梱包されるミクサブルインクスペシャルカラーで、ダークバイオレット、アクアエメラルド、ゴールドオーカーの3色。裏面には調色用レシピも記してあるため、ミクサブルインクとうすめ液で再現できます。
このスペシャルインクの存在で、購入モチベーションがさらに高まる良企画。まだミクサブルインクは試していないという人も、気軽に挑戦できそうですよね。

小日向京のひねもす文房具|第百五十三回「プラチナ万年筆 PROCYON(プロシオン)」

ペン先の裏側です。ペン芯が個性的! コンバーター使用のさい、この平たいインク吸入口がペン先首軸までインクに浸さなくとも吸入でき、またインクボトル内へわずかに残ったインクも吸い上げてくれる作りとなっています。
ペン先の先端ぎりぎりまで表裏一体となったペン芯の形も美しく、裏面の美は表面を引き立てるものなのだな…と実感させられます。

ときに今回選んだこちらのディープシー軸、PROCYONはこいぬ座の恒星・プロキオンに由来する空の名前でありながら、軸色は「深海」と海の名なのですね。その対比が、あたかも夜空で無数に輝く星が海のさざ波に映ってきらめいているような、また空からこぼれ落ちそうなまでに豊かな星粒が本当に海へこぼれ落ちてしまったかのような…眺めていると、そんな光景に思いを馳せる軸色です。

小日向京のひねもす文房具|第百五十三回「プラチナ万年筆 PROCYON(プロシオン)」

スペシャルカラーインクのアクアエメラルドを挿して、書いてみました。爽やかな良い色!
こちらの紙は、前回の第百五十二回で話題にしたコクヨのソフトリングノートです。インク色が鮮やかに映えています。
もう少しインク色のトーンを落としたいな、という場合は用紙をクリームがかったものにしたり、吸い込みの良い紙にしたりすると、パッケージにある色見本のようなコクが色みに現れます。大事にとっておきたくなるスペシャルカラーインクではありますが、新鮮なうちに使ってみるのも一案で、そしてまた初回ロット限定版があるうちに別の軸色を欲しくなる…。

ペン先の筆感は、カーブや文字の「はらい」の躍動がシャープに手に伝わるところがプラチナ万年筆ならでは。思考がはっきりしてくるのを感じます。
たとえば砂浜に指で文字を書くとき、指をまっすぐ伸ばして書けば線は浅く太めになり、指を引っかけるように立てれば線はより深く細くはっきりとします。手の指よりも足の指のほうがそうしやすいかも知れません。そんな「筆圧変化」を、このPROCYONの五角絞りペン先はひとつの形状でこなしているように感じます。
首軸寄りの側面で固定された五角絞りの部分はいわば指の付け根から第二関節にかけてで、そこからペン先の先端へ向かう長さが第二関節から指先までという感覚です。その動きを、指で砂浜に書くような気持ちになりながら、はるかにシャープでキリリとインク色を紙上へ解き放ってくれる…そんなPROCYONのペン先なのでした。

今回は字幅Fを選びましたが、試し書きしたときの中字Mもまろみがありこっくりとした書き味がまた良し。
スペシャルカラーインクの件もあって、これはMを購入する日も間近だなと思うところです。あとは軸色を決めてナガサワ文具センターへ行くのみ。
ぜひ店頭でPROCYONの現物を御覧になり、試し書きなさってみてください!

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。

文字を書くことや文房具について著述している。

『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。

著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。

「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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