ペリカンのインクといえば4001シリーズが往年の定番ですが、高級インクコレクションとしてエーデルシュタインシリーズが発売されたのが2010年のことでした。
エーデルシュタイン(Edelstein)とは「宝石」の意味。
万年筆にやさしい成分が使われたエーデルシュタインは書き味もなめらかで、発色も極上。美しいボトルインクもまさに宝石のようで、キャップを開けてインク補充をする楽しみもまた格別なものです。
現在のエーデルシュタイン定番カラーは以下の8色(カッコ内は色のイメージ)です。
オニキス(ブラック)
タンザナイト(ブルーブラック)
サファイア(ブルー)
トパーズ(ターコイズブルー)
ジェード(ライトグリーン)
アヴェンチュリン(グリーン)
マンダリン(オレンジ)
ルビー(レッド)
ここに、2012年から「インク・オブ・ザ・イヤー」と銘打ってその年だけの限定カラーが追加されるようになり、
2012年 トルマリン(プラム)
2013年 アンバー(ゴールデンブラウン)
2014年 ガーネット(ダークレッド)
2015年 アメジスト(ダークパープル)
2016年 アクアマリン(ダークターコイズ)
2017年 スモーキークオーツ(ダークブラウン)
と続いて、例年「これやはり押さえておかなければじゃないの…」と私たちの心をモヤモヤと悩ませてきたものです。
そして今年のインク・オブ・ザ・イヤーが、
2018年 オリヴィーン(オリーブグリーン)
でした。もう皆さまは購入なさいましたか?!
小日向は、定番色のなかではジェードをしつこくリピートしており、インク・オブ・ザ・イヤーでは2015年のアメジストを複数本買い。はじめは50mlで2,500円+税という価格にマジなのかと怖気づいたものの、願い通りの鮮やかな発色と書き心地の素晴らしさに「これはむしろ安い。」と悟ってからは、購入することに何のためらいもなくなりました。50mlという容量も結果として長きにわたり使え、それに比べたら瞬間でなくなるペットボトルのドリンクなど大散財に感じるわという経済感覚の崩壊。ああ、インクの世界はこわいこわい。
オリヴィーンで書いた筆跡は、このようです。Gペンで飾り原稿用紙に書きました。
深みと透明感のあるオリーブグリーン色が、紙の上に宝石をしみ込ませたような彩りですよね。
オリヴィーンとは、橄欖(かんらん)石を指す名前です。「橄欖」とは東南アジア原産の植物の名ですが、オリーブと似ていることや、その実からは油が採れることもあって、オリーブやオリーブ色のものを示す訳語としても漢字圏で使われてきました。
エーデルシュタインの色名は、いずれも宝石や鉱物の名で示されており、今年のオリヴィーンは宝石でいうとペリドットになります。
左に書き添えているのは、定番の緑色のアヴェンチュリンで、それぞれのボトルの蓋の内側も並べてみました。色の違いを感じていただけると幸いです。
オリヴィーンでもう少し文章を長めに書くと、このようになります。
オリーブ色の濃淡がひと味違ったニュアンスを生む様子が伝わるでしょうか。
ときにこちらのつけペン軸は、helicoに昨年製作していただいたもの。尻軸にももうひとつキャップが付いていて、そちらには替えのつけペン先を収納できるようになっています。こちらの軸が、まさにオリヴィーンの淡い色が現れた時のペリドットに似た色みで、最高の組み合わせだな…としみじみ。
インク色には、軸色との組み合わせを編み出す楽しみもありますよね。
それをペリカンも重々承知してのことか、2015年からはこのインク・オブ・ザ・イヤーに揃いの色の万年筆も発売されています。
2015年 M205 デモンストレーター アメジスト
2016年 M205 デモンストレーター アクアマリン
2017年 M205 デモンストレーター スモーキークオーツ
そして今年も…オリヴィーンの万年筆が発売となる予定!!
NAGASAWA PenStyle DENとNAGASAWA梅田茶屋町店では、予約のかたに非売品のペリカンコラボ手ぬぐいをプレゼントというのだから見逃せません。
私も予約しました!
オリヴィーン M205 万年筆とナガサワ文具センター×ペリカンコラボ手ぬぐいの写真など、詳細はこちらを御覧ください。
オリヴィーン万年筆にオリヴィーンインクを入れて文字を綴る日を、心待ちにしています。
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。