【コラム】白磁（BLANC DE CHINE）万年筆

2025.09.03

NAGASAWA Topics

中国にその発祥の歴史を持つ陶磁器「白磁」、その美しさは多彩な彩りで飾られた陶器とは趣の異なるシンプルな美しさで、多くの愛好家から人気を集めています。
陶器を含む”焼きもの”は「土器」「炻器 (せっき）」「陶器」「磁器」の4つに大別されますが、国や地域によって微妙に定義(表現)が異なる？という面白い世界です。
例えば、日本を代表する備前、信楽、常滑など、無釉薬焼き締め(むゆうやくやきしめ)したものは「炻器 (せっき）」に分類されるそうですが、一般的には、これらすべて「陶器」として呼ばれています。
また、中国では「磁器」と表記すると、河北省の磁州窯産を意味するなど、物書きの立場からすると、まことにやっかいな存在で、記事を書く上でまこと気を使う世界でもあります。
＊ということで、諸説ありという注意書きを加えておきます。

今回の主題である白磁の場合、カテゴリは「磁器」に分類され、高嶺石(カオリン)、珪石を含む素地に透明あるいは半透明の釉薬（うわぐすり）などの高火度釉を施して、約1300度前後の高温によって焼き上げることで、表面がガラス化して、美しい光沢と強度を伴った、陶磁器「白磁」が誕生します。
色々と普段に耳にしない単語が出てきますが、これらの技術は6世紀頃の中国で確立されていたことに驚かされます。
その後、朝鮮半島を経由して、日本にこの技術がもたらされたのは16世紀になってからでした。

「白磁万年筆（BLANC DE CHINE）」

2025年8月にリリースされたナガサワオリジナル万年筆「白磁万年筆（BLANC DE CHINE）」は、陶磁器「白磁」特有の美しさを見事に表現した質感が特徴の万年筆です。
加えて、ピンクゴールドのクリップとペン先が、純白のドレスを纏ったような軸に美しいアクセントと高貴な佇まいを添えています。
中国にゆかりがあると聞いたからかも知れませが、中国・民間伝説のひとつに数えられる「白蛇伝」に登場する、ヒロイン白娘子の姿と重なりました。

「白磁万年筆（BLANC DE CHINE）」の魅力は外観の美しさだけでなく、書き味という実用性の面でも優れたスペックを持ち合わせています。
国内最高峰の21金を採用したペン先から生まれる、安定した筆記感は過去のナガサワ文具センター限定万年筆と同じく滑らかな書き心地です。
万年筆から伝わってくるイメージと、白磁の器のような滑らかな質感が見事に重なり合い、合わせて、ナガサワ文具センターのシンボルである風見鶏の刻印によって、万年筆で「書く」という行為が特別な時間に思えてきます。

Kobe INK 物語「金駿眉ゴールドインク」と一緒に楽しむ

中国の福建省・武夷山の茶畑で採れる「金駿眉」は、最高級の紅茶として知られています。
その黄金色に見える茶葉から抽出される紅茶をイメージしたKobe INK 物語特別限定色「金駿眉ゴールドインク」が、2025年に発売されました。
もし、「白磁万年筆（BLANC DE CHINE）」と合わせて使うインクに迷ったのなら、茶葉の色を愛でるという役割を持った白磁の器をこの万年筆に見立てて、中国茶の奥深い世界を楽しむのも一興かと思います。

まとめ

白い万年筆というのはあまり種類がなく、万年筆の軸にするには少々難しい色だと思ってきました。
スタンダードな黒の軸に比べて重厚さの表現が難しく、ひとつ間違えるとチープ感が先立ってしまい、高級筆記具とされる万年筆の質感が軽く感じてしまう気がしています。
今回「白磁万年筆（BLANC DE CHINE）」の発売を耳にしたとき、ナガサワ文具センターさんはまた難しい色にチャレンジしたものだと、不安が半分、期待が半分の気持ちでいましたが、陶磁器「白磁」の特徴であるガラスのような表面のつやと輝きを見事に再現した、いい意味で期待を裏切られた万年筆が手元に届きました。
ちょっと大げさかもしれませんが、ホワイト軸の万年筆はこの技法がこれからのスタンダードになるんじゃないか？と思えるほど、自然であり高級感を一寸も損なわない万年筆として仕上がりを魅せてくれました。
万年筆の言葉が背負う、高価な筆記具に相応しいモデル「白磁万年筆（BLANC DE CHINE）」は白い万年筆のスタンダードとして歴史に刻まれてもおかしくない、そんな1本だと思います。