もくじ
初めての万年筆の選び方
文房具が大好き、たくさん販売されているカラーインクを使ってみたい、周りの友達が持っている、お父さんが昔万年筆を使っていた、など、万年筆に興味を持つきっかけは様々だと思いますが、初めて購入する万年筆はどういった万年筆が良いのでしょうか?
世の中にはたくさんの万年筆がありとても難しく思えるかもしれませんし、もしかすると万年筆を取り扱っているお店に入るのが怖いという方もいるかもしれません。
インターネットで検索すると、”万年筆初心者にオススメの万年筆 10選”などのサイトを見つけることが出来ると思いますが、基本的に万年筆の紹介だけをしているサイトが多いように感じます。
ブランド(メーカー)別、価格帯別など、確かに万年筆を選びやすいと思います。
しかしそこには、長く使用していく”モノ”としての要素が抜けているような気がします。
万年筆はとてもアナログな工業製品です。
万年筆が開発されてから基本的な構造はほぼ変わっていません。
仕組みや構造を知らずにブランドや見た目だけで選ぶと、心地よく使用することが出来ないかもしれません。
初めて万年筆を購入するからこそ、値段や構造、仕組みを知ることで、長く使える万年筆を選びやすくなる気がします。
ここでは、そういった目線で”万年筆初心者”の方が万年筆を選びやすくなるようなポイントを説明させて頂きたいと思います。
万年筆の価格帯
“万年筆は高い”というイメージを持っている方は多いと思います。
確かに万年筆専門店に足を運ぶと、1万円を超える万年筆がたくさん並んでいます。
中には5万円、10万円、100万円など高額な万年筆も並んでいます。
しかし、よく店内を見てみると… 数百円から万年筆が販売されているのを見つける事が出来ると思います。
これら数百円の万年筆も100万円の万年筆も基本的に構造が同じです。
ではなぜ、こうも価格が異なるんでしょうか?
それは… 大ざっぱにお伝えすると、”使用している素材が異なるから”です。
例えば、ペン先の素材ですが、ステンレス(鉄)を使用しているもの(鉄ペン)と金を使用しているもの(金ペン)があります。
素材としての価格がもちろん金のほうが高価なので、必然的に金ペンは高額な万年筆となります。
その他価格が高くなる傾向としては、装飾が施されているもの、貴重な素材が使用されているもの、海外メーカー品、限定品などが理由としてあります。
選ぶ字幅について
上記はご参考としてパイロットの字幅です。
メーカーや万年筆モデルによって字幅ラインナップは異なります。
万年筆を選ぶときはペン本体はもちろんですが、字幅も選ぶ必要があります。
最近の傾向としては男女ともに細い字幅の万年筆の人気が出てきています。
書く字の大きさ、筆記スピードなどからも選ぶことが出来ます。
・書く字が大きい → 文字の余白が多いので、太めの字幅が書きやすい傾向がある
・筆記スピードが遅い → インクが出る量が少ない、細めの字幅が書きやすい傾向がある
何に書くか、書く対象から選ぶことも出来ます。
・手帳 → 小さい字を書く事が多いので、細めの字幅が書きやすい傾向がある
・原稿用紙 → 一気にたくさん書く方が多いので、インクが出やすい太めの字幅が書きやすい傾向がある
これらは一例です。
他にも様々な傾向から字幅を選ぶことが出来ますので、分かりにくい場合はスタッフにお尋ね下さいませ。
鉄ペンと金ペンのどちらを選べばよい?
結論からお伝えすると、どちらでも大丈夫です。
金ペンと鉄ペン、どちらも良い特徴がありますので、自身に合った万年筆を選ぶことになります。
書き方(書き癖)は人それぞれ異なります。
それぞれの書き方に合った(=心地よく筆記出来る)万年筆がその方に合った万年筆と言えます。
どちらの素材のペン先が合っているかは好みによるところが非常に大きいと思います。
先にお伝えしたように、素材としての価格帯の違いはありますが、そこはそれぞれの方の予算によるところが大きいと思います。
むしろ、素材としての性質の差が大きいので、その違いを把握できれば選びやすくなると思います。
鉄ペンの特徴
鉄ペンはペン先の素材にステンレス(鉄)が使用されています。
素材としての鉄は、硬い素材です。
しなる、削れるなど素材としての変化が少ない素材となります。
そのため、購入直後から様々な人が書きやすくなるように作られています。
癖が少ない万年筆とも言えると思います。
そして何よりも安価です。
様々なメーカーから”入門用”として万年筆が販売されていますが、全てと言っても良いほど鉄ペンとなります。
金ペンの特徴
金ペンはペン先の素材に金が使用されています。
万年筆によって、14金、18金、21金など、金の含有量は異なります。
素材としての金は、柔らかい素材です。
そして腐食に強い特徴があります。(万年筆インクは中性ではありません)
柔らかい素材ということは、筆記時の変化が多いということになります。
少しペン先に力を加えると… ペン先がしなっているのが分かるかもしれません。
これはペン先の形状に因るところもありますが、素材としての性質でもあります。
(※ 上記は少し誤解を生む表現かもしれませんが、万年筆は力を入れて書くペンではありません。力は入れずに書くことがベストです。)
また、使い込むことで“あなた仕様”にすることが出来るのも金ペンの魅力です。
使い込むとペンポイント(ペン先の一番先にある玉状の部位)がほんの僅か削れていき、書く方の癖が付いてきます。
ネックはやはり高額になってしまうこと、だと思います。
しかし、金ペンには金ペンしかない魅力がたくさんあります。
万年筆に金ペンが使われているのには理由があります。
万年筆の構造を簡単に知ると面白くなる!
万年筆を分解してみると様々な部品で構成されていることが分かります。
万年筆の構造を知ることで、初心者の方でも長く快適に万年筆を使用し続けることができます。
これはとても重要な事ですので先にお伝えしておきますが、万年筆を分解することを各メーカーは推奨していません。
保証書がある万年筆でも保証対象外となる場合がほとんどです。
今回は構造を説明するために分解しています。
ボディ全体
ほとんどの万年筆がこういった見た目をしていると思います。
キャップと本体が分かれており、さらに本体軸(胴軸といいます)を外すとカートリッジ(この画像ではコンバーター)を抜き差しすることが出来ます。
詳細は各パーツごとの説明をご覧頂きたいのですが、そんなに多くの部品が使用されている訳ではない、ということがお分かりだと思います。
各パーツごと
そして各パーツごとに分けるとこのようになります。
【ペン先】
筆記する時に指の腹があたる部分(首軸といいます)にペン先がはめ込まれています。
ペン先は、ペン先(金属)とペン芯で構成されています。
このペン先とペン芯にインクが入っていき筆記することが出来ます。
これを毛細管現象といいますが、インクが通る隙間はとても狭いので、しばらく使わないとインクが乾燥して書けなくなってしまいます。
逆に言うと、ある程度定期的に使用していると書けなくなるトラブルは起きにくいと言えます。
ペン芯はペン先の陰に隠れて目立ちにくいパーツかもしれませんが非常に重要なパーツです。
インクをスムーズに送るためにたくさんの櫛溝が並び、先述の毛細管現象によって最適な量のインクを蓄えます。
【コンバーター】
メーカー純正のカートリッジを使用する際は不要なパーツで、様々な市販ボトルインクを使用する際に使用する部品で、”吸入器”とも呼ばれます。
コンバータの形状は様々ですが、一般的なコンバーターはご覧のように、注射器のような構造となっており、中のピストンを上下させることでペン先からインクを取り込みます。
この仕組みを利用して、コップに入れた水にペン先を浸し、コンバーターに水を出し入れするとペン先内部を洗浄することが出来ます。
本格的な洗浄は販売店にご相談頂きたいのですが、簡易的な洗浄であればこの方法で充分です。
乾燥して書けなくなった時や、インクの色替えをする時に便利な方法です。
さらに詳しく構造を知ってみたい方は各メーカーサイトにて詳しく説明されています。
セーラー万年筆 万年筆の仕組み(メーカーサイト)
プラチナ万年筆 万年筆について(メーカーサイト)
なお、万年筆の使い方はパイロットサイトに詳しく掲載されていますので、ご参考になさってください。
パイロット 万年筆の使い方(メーカーサイト)
初めての方にオススメの万年筆
簡単ではありましたが、万年筆について知って頂けましたでしょうか?
価格や構造の仕組みが分かると少し選びやすくなってくると思います。
そこで、具体的に初めての方にオススメの万年筆を少しだけご紹介したいと思います。
スタンダード仕様の万年筆
スタンダードな仕様の万年筆は、どんな方にも使いやすいような造りをしています。
癖が少なく初めての万年筆にピッタリで、”万年筆らしい”万年筆です。
・NAGASAWA オリジナル万年筆 プロフィット ブラック
NAGASAWAの万年筆の中で最もベーシックな仕様の万年筆です。
一番最初にオリジナル万年筆としてリリースした万年筆でもあります。
こちらのブログで誕生秘話を紹介させて頂いております。
・PILOT 万年筆 CUSTOM74 カスタム74 ブラック
パイロットカスタム74はパイロットの万年筆の中で、最もベーシックな万年筆と言っても良い万年筆です。
ボディの形状、重量バランス、豊富な字幅ラインナップなど、様々な方にマッチするモデルです。
低価格帯の万年筆
初めての万年筆に10,000円を超える価格帯の万年筆に抵抗がある方も居られると思います。
ここで取り上げる万年筆は全て10,000円以下です。
全ていわゆる”鉄ペン”ですが、デザインが良いものも多く、使いやすい万年筆ばかりです。
・NAGASAWA オリジナル 透明万年筆 中細
スタンダードな仕様ながら、ボディ全体が透明(スケルトン)で、別売のコンバーターを付けると思う存分にカラーインクを楽しめる万年筆です。
ペン先にはNAGASAWAオリジナルの証として定着した風見鶏の刻印を施しています。
字幅は様々なシチュエーションで使いやすい中細(MF)となっています。
・PILOT カクノ(Kakuno)
このパイロットのカクノは、本格的な万年筆でありながら価格は1,000円(+税)とお手頃価格です。
ペン先に可愛らしい”ニコニコの顔”が入り、使っている方まで笑顔になりそうです。
・Lamy(ラミー) safari(サファリ)万年筆
ドイツの筆記具メーカー ラミー社の万年筆です。
軽くて丈夫なボディと胸ポケット等をしっかりホールドする大きなクリップは、使いやすさを第一に設計されています。
正しく持てるようにグリップ部分にくぼみをつけているのは、もともと児童教育向けに開発された製品だからですが、現在では、そのデザインとカラーリングで学生さんはもちろん、大人にも人気のシリーズとなっています。
まとめ
今回取り上げた万年筆は一例です。
自身の好みや書き方、予算に応じて変わってくると思います。
万年筆の新商品は常に発売されますが、基本的な構造はほぼ変わりません。
よって万年筆の選び方も基本的には変わりません。
万年筆は仕組みや構造を知ることで、まさに”万年(ずっと)”使用できるのが魅力です。
初めての万年筆だからこそ、長く心地よく使用し続けれる万年筆を選ぶご参考になれば幸いです。
怖がらずに一度手にしやすいものからデビューしてみて下さいね!