小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

先週は、クリスマスさなかの香港にいました。
香港は力作文字に出合える街なので、足繁く訪れては文字書きの参考にしています。それと同時に文房具パトロールも欠かさず行う次第。第五十七回「香港で見た文房具」に続いて、再び香港で目にした文房具について記します。

違う土地を訪れると普段とは違ったものを目にして、自分がこれまで見てきたものとの差異が刺激となり、またいつもの場所へ戻った時の活力となるようです。
炭酸水の入ったグラスに氷のかたまりをひとつ加えると、それまでの泡がわっと増えますよね。その増えた泡が、旅を通じて得られる勢いなのだと感じます。

その泡がはじけて心へ漂ううちに、思いを書き留めておくための机は大切です。
今回の宿の机も、窓に面して昼間には明るい自然光が得られ、窓の向こうには上の写真のような港の景色が眺められて大変満足のいくものでした。

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

窓からのハーバービューに神戸の港を思い出し、このあと机に向かって手にしたのは前回・第七十一回に書いたNAGASAWAオリジナルのURUSHI JAPAN。飛行機の中でもキャップを気にすることなく書けて、とても快適でした。持ってきて本当に良かった!

部屋を下りると、ショッピングモールを抜けて地下鉄「金鐘(gam1 jung1/数字はイントネーションを示す声調で1が高く6が一番低い)」が最寄り駅というのが今回です。金鐘駅は地下鉄の2路線が交差しており、どちらの路線も香港の街なかを見て回るさいに不可欠となるため、常にこの金鐘駅からスタートできることは大変な時短となりました。
地下鉄ホームでは、駅名の書体と出口標示の「出」のマークが素敵!

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

「金鐘」の2文字にはともに「金」の字がありますが、2画目の描きかたに大きな違いが。最後の横線の終えかたも異なります。なるほど1文字目のように「金」だけで完結する文字は、2画目と最後で右側をしっかりと形作り、2文字目の「鐘」のようにそのあとにも別のつくりが加わる文字は、右側をすぼませるようにまとめるのがいいな…と参考になります。
「金」の下の2点が左右で違い、そのスタイルが「鐘」右側つくりの「童」の上「立」の2線にも活かされているところなど、芸の細かさに感心させられます。
これらはぜひ、手書き文字のさいに使いたい! と思うところです。

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

日本と同じように、書店に行くと文房具売場を併設しているところが多く、商務印書館(The Commercial Press)、誠品書店(Eslite)、三聯書店(Joint Publishing HK)といった書店には必ず立ち寄ります。
上の写真は旧正月や祝い事のさいにお金を入れて配るための小さな封筒・「利是封(lei6 si6 fung1)で、商務印書館で求めました。ぽち袋とよく似ていますよね。上の利是封は文字を最大限に大きく模様化させていて、エンボスをかけてあるところも迫力満点。
「恭喜發財(gung1 hei2 faat3 choi4)」は、新年の挨拶の定番言葉。
「馬運亨通(ma5 wan6 hang1 tung1)」は、馬(競馬)運が開けますようにの意。
その他、名字や「囍」など、様々な文字の利是封がありました。

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

書道用品にはこのような冊子があり。文字を枡目に書いて練習するためのもので右から左へと枡目が小さくなっていますが、二つ折りの中央柱が昔の綴じ本さながらで、一番左のものなど原稿用紙にそっくりですよね! こうしたものも、嬉しくなってついつい購入してしまいます。

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誠品書店には、カヴェコ アルスポーツの見慣れぬローズゴールド軸が。文房具売場の店員さんは「この軸は数ヶ月前に入荷してきたけれど、日本にはないのですか?」と意外そうな表情で、「じゃ日本のお客さまがみえたら推してみます!」と意気揚々。
こちらの万年筆コーナーには試し書きをして購入する人たちが続々いて、万年筆人気の高さを感じます。
それもそのはず、書店には前回訪れた時にも増して「文字の書きかた本」が並んでいました。そちらのコーナーも人が多く、皆真剣に良本を選んでいます。なかでもプラチナ万年筆・プレピーが付録になった書き方本など、筆記具付きですぐに練習を始められるものが人気の様子。
日本の万年筆には1.5倍くらいの価格がついており、日本で国産万年筆を買うありがたみを再認識しました。

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

三聯書店での見つけものは文房具ではなく本のほうで、『康煕字典』に目が釘付け。清の康熙帝の命で編纂され、1716年に完成したというこの漢字字典は書体だけでも美しく、字の音や意味、過去の用例が掲載されています。4万9千字超収録の原本から抜粋された「節本」で、文字が細かいためにシートレンズも付いていました。
本とはいえど、漢字の形が示されたこの一冊も文房具のひとつという位置づけで、今後この本から「いい形だな」と思ったものを、順次万年筆やつけペンで書いてみたいと思います。

小日向京のひねもす文房具|第七十二回「香港で見た文房具2」

道を歩けば、このような魅惑の手書き文字も至るところに。上の料理看板ホワイトボードの書き手、赤青インキの色使いから装飾線から文字の形までスゴ腕!!
「魚」「蒸」の四点を波線にし、装飾線のように見せて目立たせているところなど、「ただものではない……」と思わずじりじり後ずさりしました。

そんな楽しみが、香港にはあります。
そして日本に戻れば、ナガサワ文具センターに一刻も早く行きたくなるという流れ。
ナガサワ文具センターの今年の年末は30日まで通常営業、31日の大晦日は各店舗ごとに閉店時間が異なり、新年元日は本店・DEN・プレンティ店が営業、そして2日からは通常営業となるそうです。北野工房のまちのKobe INK物語 by NAGASAWAは、12月27日〜1月2日まで定休日となっています。営業時間の一覧は、以下の通りです。

年末年始営業のご案内

新年には新春SALEや数量限定福袋も用意されているそうで、楽しみですね!
今年から来年にかけてもまた、文房具とともに良き年末年始を過ごしましょう。

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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