小日向京のひねもす文房具|第十一回「リテロ ノートブック」

小日向京のひねもす文房具|第十一回「リテロ ノートブック」 ナガサワオリジナルのA5判ノートブック「リテロ」は、上の写真左から「さらさら書く スムース」「ぬらぬら書く ナチュラル」「かりかり書く ラフ」と表紙色によって紙質が違う、3種類のノートです。 このうち中央のナチュラルは、「ぬらぬら」という言葉でピンとくるかたもいらっしゃるのでは。 そう、ナチュラルには神戸派計画のグラフィーロが用紙に使われているのです。 そのグラフィーロを作る神戸派計画とナガサワ文具センターが試行錯誤しながら、お客様へのヒアリングを行い、約1年かけて製品化したものがこのリテロでした。 リテロは「万年筆をもてなすノート」。 テーマは「ホテルの品格」で、その雰囲気を外観にも質感にも表現したそうです。 表紙の手触りも紙のめくり具合もまさに極上! スウェードタッチの表紙素材はエクセーヌで、ブログ第三回「NAGASAWA PenStyle キップ 7本差し マルチロールペンケース」でも説明した通り、眼鏡拭きなどにも使われるきめ細かな繊維でできています。 ようするに──リテロの写真をスマホで撮ってSNSにアップしようという時には、リテロの表紙でスマホのレンズを磨いて撮ればいい。 そして──リテロに万年筆で何か書こうという前や後には、リテロの表紙に万年筆の軸を撫でつけて磨けばいい。 ということでもあり、今回の写真も御多分にもれずリテロの表紙で磨いて撮った次第です。 小日向京のひねもす文房具|第十一回「リテロ ノートブック」 このエクセーヌ素材は本当にいい。そしてエクセーヌをノートの表紙にするという大胆な作りに感心し、また表紙の刻印や小さなくぼみをつけたディンプルデザインにも魅せられます。 表紙を開くと、見返しに何か欧文で格言のようなものが書かれています。 これはなんだ? と思い、意味を調べてみました。ラテン語でした。▽ 《リテロ スムース》 ASPIRAT PRIMO FORTUNA LABORI. (意味)運命は私たちのはじめの努力に微笑む。 《リテロ ナチュラル》 DISCE GAUDERE. (意味)喜ぶことを学べ。 《リテロ ラフ》 VERE AC LIBERE LOQUERE. (意味)真実を自由に語れ。 なるほど…これは書く気分が盛り上がるわ…と思いつつ、正気にかえるとこちら、1冊ずつに違った言葉が印刷されているという凝りようなのですね。驚かされます。 見返しと冒頭ページには、名前や住所、日付、使ったインクやペンを記す欄からインデックス表も付いています。これにもまた書きたい気分が高まる! そして万年筆での書き味はといえば。 小日向京のひねもす文房具|第十一回「リテロ ノートブック」 それぞれの紙にそれぞれの良さがあって、1本の万年筆の楽しみが3倍に広がる書き心地。 紙面の端に注目すると、罫線がノドや小口まで延びて断ち切りになっておらず、端に至る手前で罫線が終わっています。罫線の間隔は8ミリ。これは、太字の万年筆でもゆったりと書くことを考えたためだそうです。紙色にも違いがあり、万年筆のペン先のみならずインクの発色も3倍に広がりそう。 この3冊のリテロに書いていて、何より際立つのはその筆記音です。 スムースは、さらさら。 ナチュラルは、ぬらぬら。 ラフは、カリカリ。 …えっ、「ぬらぬら」って音なの? と思いきや、なんとこれは音でもあったのだ…と知りました。 このノートはぜひ、何かずっと手元に残す記録に使いたい。 そこで思ったのが、家族間の交換日記です。 小日向は子どもの頃、父と交換日記をしていました。 ある時には罫線からはみ出る大きな文字で、またある時には極端に小さな文字で、学校での勉強のことを書いたり、唐突に物語を書きはじめたり。父もきっと、脱力しつつ楽しかったのではないかな…と今になって思います。 あの頃に、このリテロで交換日記をしたかった! リテロ3種はどれも罫線ページが186ページと書きでたっぷり。他に扉やインデックス欄を含んで本文総ページは192ページとなっています。 用紙が違うので、ノートの厚みが異なることにも要注目。▽ 小日向京のひねもす文房具|第十一回「リテロ ノートブック」 同じページ数でも、紙によってこれほど変わるものなのですね。個性あふれる書き心地にも納得です。 リテロはギリシア語で「文字」という意味だそう。 人が文字を記す時、そこには様々な思いが筆記具を持つ手を介して流れ出ていきます。 そこに「書く喜び」が加わることで、文字の痕跡は紙の上で生き生きと輝き続けることでしょう。 今回紹介した商品はナガサワ文具センター公式オンラインショップでお求めいただけます。 「リテロ ノートブック」

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。 文字を書くことや文房具について著述している。 『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。 著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。 「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。 小日向京のひねもす文房具



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