この度の能登半島地震により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
また、被災地の一日も早い復旧を心よりお祈り申しあげます。

小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第四十七回「万年筆シリーズのボールペン軸」

万年筆シリーズのボールペン軸

いわゆる「高級万年筆」に位置づけられる製品シリーズには、同種のボールペン、シャープペンシルやローラーボールなどが多々用意されているものです。モンブラン・マイスターシュテュックのボールペン、ペリカン・スーベレーンのペンシルといった具合。
しかしそれらはけっこう高い。「万年筆より2万円安いけど、そもそも6万円のボールペンってアリなの?!」と我にかえったり、「2万円〝しか〟違わないのなら、ボールペンよりも万年筆のほうにしようかしら」などと、あらぬ方向に考えが飛んで我を忘れたり。

そんなこんなで「ただでさえ万年筆選びのほうでにっちもさっちもいかないため、考えないようにつとめていた」ボールペン軸でしたが、その決意が大きく揺らぐ出来事が過去にありました。

『趣味の文具箱 vol.32』p18〜27で「趣味と実用のボールペン選び」と題し、ボールペン軸やリフィルの記事を書いた2014年の暮れ。
この撮影用ボールペン軸を選ぶさい、各メーカー主要万年筆のボールペン版をまじまじと眺めていて、「こんなに魅力的な軸が色々あるのか……」と深く感じ入ったものでした。
万年筆とはまた違ったデザイン性に富み、シンプルな内部構造を活かした軽快な外観の虜に。
そのなかの1本が、冒頭写真のアウロラ・オプティマ ブラックパール ボールペンでした。
試し書きをしてみれば、これがまた手にぴたりと沿うようになじみ、ペン運びの良さも抜群で、ボールペン軸の魅力は外観だけの話ではないのだと気付かされました。

アウロラ・オプティマ ブラックパールの万年筆や、他の軸などはこちらのアウロラサイトを御参照ください。
どれもこれも美しい〜!!
軸にはアウロラ独自の樹脂「アウロロイド」が使われ、複雑な色彩の織り成す世界にひとたび魅入られると時を忘れてしまいます。
プラックパールもこのような感じで…。▽

万年筆シリーズのボールペン軸

深海で見つけた未知の石のような、牡蠣の一生を表したような、岩塩の旨みを感じさせるような。
オプティマの万年筆は軸の最大径が15.4mmで、ボールペンは13mm。このわずか2.4mmの差でもずいぶんと印象は異なり、万年筆はずっしり太軸に、ボールペンはすらっと中細軸に感じます。その中細軸で眺めるアウロロイドもまた一興で、ますます万年筆も手にしたくなる…という相乗効果もあり。ボールペン軸恐るべし、と心底感心したものでした。

そしてもうひとつの出来事に、趣味文32のボールペン記事から少し経った頃、利き手が動かなくなるという事件が自分の身に起こりました。この顛末と回避策については『趣味の文具箱 vol.34〜36』で3回にわたって書いた通りで、利き手ではないほうを使い一から文字を書く大特訓をした次第でしたが、そのさいにあれこれ筆記具を試すうち「どうにかすぐに文字を書けるボールペン軸と、うまくいかないボールペン軸がある」という経験をし、「ボールペン軸を選ぶことは意味のある行いなのだ」と痛感。同時に、比較検討は中身のリフィルや字幅にも及びました。

アウロラのボールペンリフィルは、パーカータイプ(別称・G2)です。パーカーをはじめ、ペリカン、ファーバーカステル、エス・テー・デュポン、デルタ、ビスコンティ、そして日本のOHTOなどなど枚挙に暇ないほど様々なメーカーのレギュラーサイズボールペンと互換性があります。
そこで、ボールペンリフィルを交換する選択肢もぐっと広がります。

万年筆シリーズのボールペン軸

写真右は純正のアウロラリフィル、左はドイツのシュミット社の開発による、インク粘度を約40%落として書き味を軽くしたというエス・テー・デュポンのイージーフローリフィルです。
書き味にも描線にも明らかな違いがあり、ゆっくりと溝をつけながらカーボン複写紙に書く時にはアウロラリフィルのような粘度高めの油性ボールペンを、筆圧を加えずに速度をつけて書くメモ記述時にはイージーフローを、という風にその時の使途によってリフィルを挿し替えています。

リフィルが共通ならば、年代もののボールペン軸も新たなリフィルに替えるだけでOK。
ナガサワ文具センターのヴィンテージ筆記具コーナーに釘付けになりながら、新旧ものを問わずこの世界にどっぷりとはまっているのでした。

ボールペンといえば実用筆記具のひとつであり、特に油性インクについては色のバリエーションはさほどなく、万年筆で味わうような多岐にわたる情緒性には欠けるように見えても、軸素材による握り心地や重量バランス、リフィルによる微妙な書き味の違いは実に奥深いもの。
筆圧のかけ具合によって繊細に変化する、描線の美しさも見逃せないところです。
ひとつお気に入りの万年筆と同じシリーズのボールペン軸から、好みの使い心地を探究されてみてはいかがでしょう。
ボールペン軸については、リフィルともどもまた別の機会でも話をいたしたく思います!

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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