いま万年筆好きの間で話題となっているのが、こちらのきらめくレジンの軸と「BENU」の文字。
ロシア・モスクワの工房で作られている万年筆です。
多面体でキラキラ輝く軸は、キャップを閉じたままなら一見「これは魔法の杖なのか?」と思わせるような存在感。
このBENUの万年筆が8月初旬、NAGASAWA梅田茶屋町店に数多く入荷されました。
入荷翌日のショーケースはこの通りで▽
ディスプレイにはシマーリングインクと組み合わせた演出がなされ▽
このようなスカル(髑髏/ドクロ)モチーフでロックテイストなものもあったり▽
…と、売場でひときわ目立っています!
ペン先は、シュミットのF。これらはスチールニブです。
軸デザインによって大きめのニブと小さめのニブがあり、いずれも軸と非常にバランス良く組み合わせてあります。
書き味に定評のあるシュミットのペン先は、helicoのオーダーメイド万年筆で愛用中というかたも多くおいでなのではないでしょうか。あのなめらかな書き心地の良さは、BENUの軸にもしっかりと生かされています。
万年筆を使うようになって(そして気づくとペンケースもろとも色々増えてしまって)スチールから奮発して14金、さらに一念発起して18金などと様々なペン先を日々試し、ひと通り一巡すると「あれっ、スチールのペン先って意外といいかも知れないぞ」と感じることがあるものですが、BENUの万年筆は〝いよいよもってそれを実感できる〟筆感の良さがあります。
こちらは手前が「Symphony」、奥が「Secret Garden」です。
ラメがアクセントというよりも、軸柄の主役のように贅沢に入っているところがBENUの目を引く所以で、このシリーズの多面軸の美しさもあいまって、光にかざし縦に横にと動かしてみると時を忘れる魅惑があります。公共の場で時を忘れぬよう要注意かも…?!
パイロットのブルーブラックインクで書いてみました。
気持ちいい…!!
軸は心持ち軽く、軸の重みで書くタイプではないかな? と思わせる書き出しですが、軸の太さやレジンの感触がグリップ感良く、万年筆で書くさいの筆圧ゼロからの流れを自然に行うことができます。
用紙は、第百五十二回で話題にした、コクヨのソフトリングノートです。この紙との相性も抜群!
対応するインクカートリッジは、ヨーロッパタイプの小となっています。
ヨーロッパタイプ小カートリッジ以外のインクを使う場合は、ふだんから温存しておいた空きカートリッジにシリンジでインクを注入すれば、神戸INK物語も入れられますね。
そしてBENUのもうひとつの魅力が、別売のペンスタンドです。2本をスタンドに立てたところは上の写真の通りで、まるで情熱的な水晶の原石のよう。
次に書きはじめるまで、このように立てておき机上の美しいディスプレイとして軸を眺めながら楽しむことができるのです。
書き心地の良さ、デザイン性の高さ、軸素材の感触など、こと万年筆好きにとって「ここだけは譲れない」という大切な点があるものです。
BENUはそれらを多くの人たちのストライクゾーンに合うように作るだけでなく、「ここだけは譲れなかったけれど、これからはここも譲れなくなりそう…」と思わせるような万年筆作りを行っていると感じます。
BENU万年筆の魅力を、NAGASAWA梅田茶屋町店でぜひ体感なさってみてください。
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。