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小日向京のひねもす文房具|第八十六回「飾り原稿用紙・ふたふで箋《金鶯錯》」

小日向京のひねもす文房具|第八十六回「飾り原稿用紙・ふたふで箋《金鶯錯》」

2017年春、あたぼうステーショナリーの飾り原稿用紙とふたふで箋に新たな柄が加わりました。そちらが前回の第八十五回の最後の写真にある紙の柄、「金鶯錯(きんおうさく)」です。

飾り原稿用紙はA4サイズ400字詰の原稿用紙。
ふたふで箋は、171×168mmのほぼ正方形をした200字詰の原稿用紙型の用箋。
いずれにも、飾り枠があしらわれています。

これまでに発売された柄は以下の通りです。

《飾り原稿用紙》
波抹茶(なみまっちゃ):緑色系
黒雷公(くろらいこう):黒色系
桃雲流(ももうんりゅう):桃色系
蔓葡萄(つるぶどう):紫色系
港煉瓦(みなとれんが):茶色系
碧翡翠(あおひすい):青色系

《ふたふで箋》
波抹茶(なみまっちゃ):緑色系
蔓葡萄(つるぶどう):紫色系

ここに今回「金鶯錯」が飾り原稿用紙・ふたふで箋ともに加わった次第で、金色のシアー感を鶯色に落とし込んだニュアンスカラーとなっています。

飾り枠のテーマは「錯視」。デザイナーのhoririumさんは幾何学模様や蛇腹などの造形物を作品モチーフにし、錯視図形にも思い入れの深いかたで、つまり一口で言うと〝パネェ〟という言葉がぴったりの御仁。そんなhoririumさんが本領をいかんなく発揮させて図案を完成した金鶯錯でした。

小日向京のひねもす文房具|第八十六回「飾り原稿用紙・ふたふで箋《金鶯錯》」

枠の緻密な錯視模様を御覧ください。線を辿ると上にあったものがいつの間にか下にあり。眺めれば眺めるほどに、見入ってしまいますよね。
下は飾り原稿用紙、上はふたふで箋の錯視模様で、今回の飾り枠は幅広のため、ふたふで箋での柄名称は飾り枠の上に載せています。
この錯視模様を「何色にするか」という点が、図案ができたあとの検討事項でした。これまでの柄ラインナップと重複しない色であることはもちろん、濃い色や鮮やかな色でも、幅広の錯視模様が主張しすぎてしまいます。
◆ 文字を書く時には気にならず、眺めると模様に心奪われる
◆ インクとの色合わせを楽しめる
◆ ちょっと違った気分で書きものに向かうことができる
そんな色をあたぼうの佐川さん、hoririumさん、小日向と話し合った結果、こちらの色に落ち着きました。

続いて名称の候補を小日向が考え、こちらも三人で検討。「金鶯錯」は見た目が読みづらい漢字の並びですが、もともと「ぱっと見て読めないくらいの名称が、むしろわくわくして良い」という佐川さんの好みに合致したようで、金鶯錯に決まりました。

それにしても「鶯」というのは、素敵な形をした漢字ですよね。
このウグイスを示す漢字は「鴬」と冠の上を「ツ」にして書かれることもありますが、がぜん旧字体の「火火」のほうを使いたくなります。もしもウグイスを両手で優しく包み込んだら、こんもりとしたあたたかい毛並みを感じそう。そんな雰囲気が「鶯」の漢字にはあります。

小日向京のひねもす文房具|第八十六回「飾り原稿用紙・ふたふで箋《金鶯錯》」

用紙はこれまでと同様のキンマリスノーホワイト。「金鶯色」はことのほか様々なインク色との相性が良く、淡い色みの効果なのか、使うインク色を選びません。見本が届き試してみて、これほどまでに守備範囲が広いものかと驚きました。
書く前にはちょっと薄い罫線色かな? と思っても、文字をのせると描線を引き立て、互いを際立たせてくれている──文字を書く紙における理想のひとつが、ここにあります。

錯視模様は、書いている合間に考えごとをする時こそ眺める絶好の機会です。模様を辿りながら上へ下へと線が交差し、行き着く先は「良い考えごと」だったという場面もあることでしょう。

小日向京のひねもす文房具|第八十六回「飾り原稿用紙・ふたふで箋《金鶯錯》」

そして授業中に教科書への落書きをした時のように、錯視模様を塗りつぶしてみるのも考えごとに効くかも知れません。いっそ上の写真のように色鉛筆を使ってコロリアージュ気分で塗ってみるのも楽しそうですね。

飾り原稿用紙・ふたふで箋ともにナガサワ文具センターで好評発売中です。
店頭でぜひ、金鶯錯の風合いを御覧になってみてください!

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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