小日向京のひねもす文房具

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

コンバーターは、カートリッジ式万年筆用のインク吸入器です。
これを使うと、カートリッジのラインナップにはないインク色も自在に選べるところが利点です。つまり、お気に入りのボトルインクを──特に、Kobe INK物語を──使える!わけです。
コンバーターは万年筆メーカー各社が用意しており、カートリッジ式万年筆を購入すると付属していたり、コンバーターの単体販売もあったりします。
そんななかパイロットは2015年末、二種類のコンバーター・板バネ式のCON-20と回転式のCON-50を生産終了し、新たな透明ネジの回転式・CON-40に統一するとアナウンスしました。

2016年4月に更新した第三十七回「飾り原稿用紙・碧翡翠(あおひすい)とオエステ会プレラ・カワセミブルー」の頃に付属していたコンバーターはまだCON-50で、その後2017年4月の第八十五回「オエステ会プレラパロットグリーン」ではCON-40に変わっています。
単体販売では、2016年の6月頃にはCON-50のメーカー在庫がなくなっていました。
今後はすっかりCON-40との付き合いが続く…となった現在、あらためてCON-40でのインク補充について考えてみたいと思います。

というのもCON-50から気になることではありましたが、こちらのCON-40も「インクを吸い上げてもいっぱい入らないから、もっとインクを入れたい!」という欲求を抱くものなのです。
その理由は、ネジを上げきってインクを吸い始めるところがずいぶん下(ネジ寄り)にあること。▽

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

これをペン軸に挿してまともにペン先から吸入すると、上部の空気を吸い込んで、ネジを回し下げてもこのくらいしかインクを吸い上げられません。▽

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

この空気のスペースを、インクで満たすことができたらどんなに良いか!
一番手っ取り早いのは、シリンジを使ってコンバーターへ直接インクを注入してしまうことですが、それもちょっと手間だ…とか、今は近くにシリンジがない…とかいう場合もありますから、CON-40ひとつでインクを満たす小日向なりの手だてを紹介します。

《1》ペン軸からコンバーターを外して、ボトルインクへ直接コンバーターの口をひたし、少し吸入したら途中でやめます。
《2》コンバーターを上に向け、斜めに傾けながらネジを回し下げます。

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

そして、インクを下へ移動させ、間に入り込んだ空気を上へ追い出します。

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

《3》インクを下に移動させたら、ネジを回し上げます。インクも上へ持ち上がることになります。ここで再度ボトルインクへコンバーターの口をひたして、また少し吸入します。

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

《4》少し吸入したら、《2》の時のようにまた少し傾けてネジを回し、インクを下へ移動させて間の空気を追い出します。
空気が邪魔をしてなかなか出ていかない場面もありますが、コンバーターを傾けた時に空気が抜け出す余地を作ることが肝要です。そこで、一度にインクを吸い上げすぎず、少しずつインクを足していきます。ネジは逆回転したりなどして上下させると、インクが下へ移動するとっかかりができやすくなり効果的です。

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

《5》ネジを回し上げて、インクを上へ持ち上げます。これで、当初の空間がインクで埋まりました。最後にインクを吸い上げます。
このようにインクが入った状態で逆さにしても、インクは流れ落ちていきません。

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

《6》最後はインクを満たしきらず、少し口に空間を設けます。ペン軸に挿した時にインクがあふれ出ないようにするためです。

小日向京のひねもす文房具|第九十四回「パイロットコンバーター CON-40」

《7》というわけでインクタンクいっぱいにインクが入りました。

めでたい!これでしばらく遊んで暮らせる…という気持ちで、次のインク補充まで余裕をもって筆記に向かえます。
上での使用インクは、Kobe INK物語 #30 王子チェリーでした。
オエステ会のプレラパロットグリーンには、すっかり王子チェリーが定番に。くっきり読みやすいマゼンタ色で、気分も明るくなります。

ネジも透明なCON-40は、インク補充も軽快な心持ちで進み、透明軸のプレラにもぴったりです。「あの空間」をシリンジなしで解消したい場合にはぜひ、上の方法をお試しください。
もしもの時のため、ティッシュの御用意も忘れずに。
たっぷり入れたインクで、日々楽しく万年筆を紙に走らせましょう!

小日向 京(こひなた きょう)

文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。

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