あたぼう発売、hoririumデザイン、小日向 京監修の「飾り原稿用紙」シリーズのうち、今年4月に発売となった「碧翡翠」柄が、ISOT 第25回 日本文具大賞 デザイン部門のグランプリを受賞しました。
大変光栄で嬉しいです。あたぼうさん、おめでとうございます。
上の写真文面は祝いの言葉と、これまでの飾り原稿用紙のあらましを書いたものです。
こちらのひねもす文房具でも、第十三回そして第三十七回で飾り原稿用紙について書きました。
その後、2016年7月6日より3日間開催された第27回 国際文具・紙製品展(ISOT)で日本文具大賞グランプリを受賞した次第です。日本文具大賞には「機能部門」と「デザイン部門」の2部門があり、それぞれ優秀賞が5点ずつ選出され、機能部門のグランプリ・デザイン部門のグランプリが決まります。
機能部門のグランプリは、デザインフィルの「knoxbrain LUFT(ノックスブレイン ルフト)」でした。薄くて軽量なシステム手帳で、本革カバー・バックプレート・リングの3パーツのみで構成され、180度降るフラットに開くスタイリッシュな逸品です。
ISOTでのあたぼうブース・飾り原稿用紙コーナーはこのようでした。▽
会期中には多くの方々がお立ち寄りになっておられました。「可愛らしい」「懐かしい」「書き心地がいい」「カバーや包み紙にしてみたい」といった声をお聞きして嬉しい限りです。
クリップボードに挟まれた飾り原稿用紙には、皆さんによる試し書きが。紙のめくれ上がった姿がイカ焼きのようでそそる! 思わず裏に返したい……。▽
そう、まっさらな飾り原稿用紙は書かれたり、触れられたりすると、ほどなくして波打ったり、めくれ上がったりします。それは「人の手が介されたことの証」であり、紙の魅力のひとつと切に思います。描線が書かれ、人の手が触れることで、紙に命が宿るように感じるからです。
受賞製品 展示コーナーでの飾り原稿用紙も、同様に端が丸まりに丸まっていました。▽
写真の下部に御注目。これぞ絶景! こんな風に紙が繰り返しめくられた姿こそ、第二の美観と感じ入ります。
ブースでは、碧翡翠柄を拡大して四角くくり抜き、そこに顔をのぞかせて記念撮影をできる「飾り原稿用紙パネル」も用意されていました。
こちらはパネルを手にする、あたぼう代表取締役・佐川さんです。▽
笑顔です。このパネル、たとえ最初は恥ずかしがっても、手にして顔をのぞかせると笑顔になってしまうという不思議な大道具でした。
佐川代表曰く「飾り原稿用紙は、皆様の愛で育てられております」とのお言葉。本当にその通りだと思います。元来文字数をカウントするための原稿用紙の枠を超えて、インクの試し書きに、ルーズリーフやシステム手帳のリフィルに、ブックカバーに、折りたたんでカードケースに、プレゼントの包装に…と幅広く使っていただいており、FacebookやTwitterなどSNSでの筆記具紹介や手書きツイート写真にも選んでいただく光景が増えました。
現代ならではの原稿用紙の使われようを拝見できることは喜びです。
佐川代表とともに、この飾り原稿用紙において不可欠なかたがデザイナーのhoririumさんです。
プロダクトデザイナーを経て、蛇腹手帳や多面体展開図のフォーマットを多数作成。そのデザインの方向性は、こちらの作品倉庫に詳しく、紙を折ることで構成される立体物の造形美を追究されています。
hoririumさんの目にはおそらく、平面である飾り原稿用紙も立体物のイメージで写り、その枡目を縁取る飾り枠や中央の柱をデザインされたことと察します。だからこそ、この原稿用紙は書くだけではなく折ったり、包んだり、たたんだりしたくなるのかも知れません。
さて、先の記念写真用パネルはその後、ブースの柱に貼られた「デザイン部門グランプリ」のプレートと結合。▽
なんと、このパネルの四角い窓とプレートがぴったり同じ大きさで、うまくはまった!
しばしの間、このようにされていたISOT 3日目最終日でした。
上の写真にも見られる商品名の「飾り原稿用紙」ロゴは、小日向の手書き文字です。
この手書きロゴを作成した2015年の初春ごろ、小日向は利き手の右手が動かず、左手で文字を書いていました。
文字はどうにか書けるようにはなっていましたが、このロゴ作字に太字の平たいペン先を使って線に抑揚を出す場合、右手で扱わなければうまくいかない場面がありました。
このロゴに使いたかったものはペンポイントのない、つけペンのカリグラフィーペン先です。
縦線は太く、横線は細く引けるペン先も、漢字の縦線なら全部太くなって良いものではありません。たとえば原稿用紙の「用」の字の場合、一番左の縦線は細めに、一番右の縦線は最も太く書きたいところです。ペン先が左から斜めに入るアプローチでは思った線が(おそらく当時の慣れない自分の左手では)引けなかったため、文字自体を90度右方向に寝かせて書きました。
その向きなら、左手で書いてもペン先が右から斜めに入るアプローチになるためです。
そのようなわけで、このロゴは正方向ではなく、90度右に向きを変えて書いています。というこの作字には大変苦心して、300近くは書き続けました。
今ならもっと力作が書けたのかも! と惜しい気持ちにもなりますが、あらためて眺めると苦労の痕跡がそこかしこに見られて、人生に無駄なことはないのだなと思います。
飾り原稿用紙は、これからも新柄を企画中です。
現在ナガサワ文具センター 梅田茶屋町店・神戸煉瓦倉庫店で取り扱い中。
今後とも御愛顧のほどお願い申し上げます。
小日向 京(こひなた きょう)
文具ライター。
文字を書くことや文房具について著述している。
『趣味の文具箱』(エイ出版社刊)に「手書き人」「旅は文具を連れて」を連載中。
著書に『考える鉛筆』(アスペクト刊)がある。
「飾り原稿用紙」(あたぼうステーショナリー)の監修など、文具アドバイザーとしても活動している。