オフィス移転では「内装・家具・引っ越し」の段取りに目が向きがちですが、実は業務の土台である電話番号の継続・移設と光回線の手配、そしてLAN・Wi-Fi・セキュリティの設計が最重要です。
現場で抜けやすい手配事項をチェックリストとして整理し、スケジュールから切替当日の運用までを一気通貫で解説します。
この記事でわかること
ポイント要約
- 移転前後のスケジュールと優先度
- 電話番号の継続・移設・クラウド化の選び方
- 光回線・固定IP・冗長化の判断軸
- LAN配線・Wi-Fi・セキュリティ設計の勘所
- 当日のカットオーバー手順とトラブル対策
全体スケジュールと進め方
タイムラインの目安
- 移転決定直後:現状把握(番号・回線・機器・席数・拠点構成)と要件定義
- 2〜3か月前:回線申込、ビル側調整、番号移行可否確認、機器調達
- 1〜2か月前:LAN配線とWi-Fi設計、ルーターやUTM選定、IVRガイダンス原稿作成
- 2〜3週間前:設定リハーサル、監視やバックアップ回線の疎通確認
- 前日〜当日:手順書に沿って切替、受電・通話・ネット・印刷など全席検証
現状の棚卸しテンプレート
- 外線番号・代表組・内線体系・FAX番号の一覧化
- 現行回線(光・CATV・専用線など)の契約者名義・契約期間・違約金
- 固定IPの有無、VPN・リモート接続・社外公開の有無
- 機器リスト(ルーター、UTM、L2/L3スイッチ、AP、IP電話、複合機、入退室、監視カメラ等)
- 新オフィスのビル仕様(MDF/IDF、弱電縦管、共用部工事申請、作業時間帯)
電話回線まわりのチェックリスト
番号の取り扱い
- 現行番号を継続か新規か、または部門別に統合・分岐するか
- 番号移行の手段(移設、ひかり電話化、クラウドPBX収容)の可否と手続き
- IVR構成とガイダンス文面(時間外、臨時案内、代表組の流れ)
運用方式の選択
- 構内PBX/ビジネスフォン:操作性と内線の安定性
- クラウドPBX:拠点横断・在宅内線・災害時の冗長性
- IP電話(ひかり電話等):番号継続とコストのバランス
設計ポイント
- 席数・同時通話数・外線チャネル数の適正化
- コールフロー(代表→IVR→部門→不在時の転送・留守電)
- FAXの扱い(IP化の安定性、eFax等のデジタル化)
- レンタルと買取の総保有コスト比較
手配時の落とし穴
- 契約者名義の齟齬で工事不可 → 名義・設置住所・権限を事前確認
- 最低利用期間や解約金の見落とし → 期日逆算で申請、光コラボは事業者変更も検討
- 番号案内の更新漏れ → 名刺・Web・Googleビジネスプロフィールの切替
インターネット回線のチェックポイント
回線選定の基本
- 用途別帯域設計(クラウドSaaS、Web会議、VDI、VPN、監視カメラの上り)
- 冗長化(異キャリア・異物理経路・回線種別二重化+4G/5Gバックアップ)
- 固定IPの要否(VPN、社外公開、監視)
- IPv6 IPoE対応とルーターの処理性能(実効スループット、同時セッション)
引込とビル調整
- MDFからテナントまでの配管・空配線の有無、占用可否
- 共用部工事の申請、工事時間帯の制限、搬入経路の養生
- 引込不可時の代替(無線系、別ルート、フロア間伝送)
社内LANとWi-Fi設計の勘所
物理配線とスイッチ
- OAフロアや天井配線の経路計画、情報コンセントの最適配置
- カテゴリ選定(将来10Gbpsを見据えたCat6A等)、PoE給電必要台数
- ラック、UPS、温湿度・漏水監視、ケーブルラベリング
Wi-Fi設計
- 想定同時接続数とアプリ特性からAP台数と配置を決定
- バンド・チャネル設計、隣接テナントとの干渉対策
- ゲストWi-Fiの分離、VLAN設計、帯域制御
セキュリティと運用
- UTM/ファイアウォールの要件定義、ログ保全、リモート運用
- 端末認証やネットワークアクセス制御、ゼロトラストの考え方
- 監視とアラート(回線・機器・AP・VPNの死活と閾値監視)
業務機器とクラウド連携の確認
- 複合機・プリンタの有線/無線接続、印刷サーバの扱い
- 会議室のWeb会議機器、デジタルサイネージの配線
- 入退室・監視カメラ・センサーのPoE要件と録画保存先
- 業務アプリやSaaSのIP制限・SSO・VPN要件の洗い出し
切替当日の段取り
カットオーバー手順
- 旧拠点の最終バックアップとアナウンス切替
- 回線疎通 → WAN → LAN → Wi-Fi → 電話 → プリンタの順で確認
- 代表番号の受発信、IVR分岐、FAX送受信テスト
- 主要SaaSのアクセス、VPN、ファイルサーバの確認
- 各席チェックリストで全端末の動作記録
ロールバックと連絡体制
- 切替失敗時に戻す手順と判定タイミングの明文化
- 回線事業者・ビル管理・内装・電気・ネットワークの連絡網
失敗あるあると回避策
- 番号移行の申請遅れで開通に間に合わない → 早期申請と暫定番号の同時手配
- MDFからの配管容量不足 → 事前の現地調査と代替ルート検討
- Wi-Fi過密で会議が途切れる → AP最適配置・チャネル再設計・会議室優先帯域
- UTM性能不足で体感が遅い → 実効スループット基準で機種選定、機能別負荷見積もり
- 名義違いで工事が止まる → 契約者・設置住所・権限の三点確認
配線・ネット回線の最終チェックリスト
- 外線番号と内線体系を確定、IVRとガイダンス文面を用意
- クラウドPBXか構内PBXかを決定、同時通話数を定義
- 回線は帯域と冗長化を設計、固定IPとIPv6対応を確認
- MDF/IDFや縦管の事前調査、ビル申請を提出
- LAN配線系統図、スイッチとPoE台数を確定
- Wi-Fiは人数と用途からAP台数・位置・チャネルを設計
- UTM/ファイアウォールの要件、ログ・監視方法を決定
- 複合機・会議機器・入退室・カメラの接続方式と電源を確認
- VPNとSaaSのアクセス要件、IP制限・SSOを整理
- カットオーバー手順書とロールバック条件、テスト項目を作成
用語ミニ解説
- IVR:音声ガイダンスで着信を部門に振り分ける仕組み
- MDF/IDF:ビルの主配線盤/階配線盤。回線引込や各フロアへの分岐点
- UTM:複合脅威対策を統合したセキュリティ装置
- PoE:LANケーブルで電力供給する技術。APやIPカメラに活用
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よくある質問
回線はいつまでに申し込むべきですか
ビル調整や番号移行、機器調達を考えると、移転決定後すぐ要件定義を開始し、目安として2〜3か月前には申込みを済ませるのが安全です。繁忙期や特殊工事が必要な場合はさらに前倒しが無難です。
固定IPは必要でしょうか
社外からのVPN接続、監視カメラの遠隔閲覧、社内サービスの外部公開などがある場合は固定IPが有効です。不要であれば動的IPとDNSで運用し、コストを抑える選択も可能です。
バックアップ回線はどの程度用意すべきですか
メインがベストエフォートの場合、異キャリア・異経路での二重化に加え、4G/5Gルーターによる自動フェイルオーバーを準備すると障害時の影響を最小化できます。