オフィスの防災用品、どこまで準備できていますか?
大地震や豪雨、台風などの災害は「いつか起こるもの」ではなく「いつ起きてもおかしくないもの」になりました。
特にオフィスでは、従業員や来客の安全を守るだけでなく、事業継続(BCP)の観点からも防災用品の備蓄が欠かせません。
今回は、「何を」「どれくらい」「どこに」備えればよいのかを、具体的なリストとともに解説していきます!

オフィス防災用品が重要視される理由
最初の72時間をどう乗り切るかがカギ
大規模災害が発生すると、交通機関の麻痺やエレベーター停止、停電・断水などにより、
従業員がオフィスに留まらざるを得ない状況(帰宅困難)が想定されます。
特に発災から最初の72時間(3日間)は、行政からの物資供給が追いつかず、
企業自身の備えが従業員の生命線になります。
BCP(事業継続計画)と従業員の安全確保
BCPの目的は「災害が起きても事業を止めない・止まっても早期復旧する」ことです。
しかし、従業員の安全と健康が確保されなければ、事業継続はあり得ません。
その意味で、防災用品や備蓄品は、オフィスにとって最優先で投資すべきインフラと言えます。
条例・ガイドラインによる備蓄の推奨
一部自治体(例:東京都の帰宅困難者対策条例など)では、
事業者に対して従業員3日分の水や食料の備蓄を努力義務として求めています。
法的義務の有無にかかわらず、同等レベルを目安に備えるのが実務的な標準になりつつあります。
オフィスに必ず備えておきたい防災用品リスト
ここでは、オフィスに最低限そろえておきたい防災用品をカテゴリ別に整理します。
1. まず「命を守る」ための防災用品
- ヘルメット・防災頭巾(従業員数分)
- 懐中電灯・ランタン(LEDタイプ、1人1台が理想)
- ホイッスル(閉じ込め時の居場所知らせ用)
- 軍手・作業用手袋
- ガラス飛散防止フィルム(窓・ガラスパーテーション)
- 家具・什器の転倒防止金具(書庫・ロッカー・サーバーラックなど)
- 非常用脱出工具(バール、ハンマー、ガラス破砕具など)
特に書庫やキャビネットの転倒防止、窓ガラスの飛散対策は、
「今あるオフィス家具」に少し手を加えるだけでも効果が大きいポイントです。
2. 水・食料などライフラインを支える備蓄品
水と食料は、従業員1人あたり3日分を最低ラインとして考えます。
- 飲料水:1人1日あたり約3リットル × 3日分
- 主食系非常食:アルファ米、レトルトご飯、乾パン、クラッカーなど
- おかず・間食:缶詰(魚・肉・野菜)、栄養補助食品、ビスケット、チョコレート
- 長期保存可能なスープ・味噌汁
- アレルギー対応食品(該当者がいる場合)
- 粉末飲料・飴(ストレス軽減や水分・糖分補給用)
オフィスでは「全員同じもの」になりがちですが、可能であれば
カロリー・栄養バランスや好みも考慮し複数種類を組み合わせると、心身の負担を減らせます。
3. トイレ・衛生・女性向け用品
- 簡易トイレ・携帯トイレ(1人1日5回 × 3日分が目安)
- トイレットペーパー・ティッシュペーパー
- ウェットティッシュ・アルコール除菌シート
- ビニール袋(45Lごみ袋など)
- マスク(不織布・布マスク)
- 生理用品(ナプキン、タンポン、ショーツなど)
- 歯みがきシート・マウスウォッシュ
トイレ問題は、災害時に最もストレスが大きい分野のひとつです。
特に女性従業員が多い職場では、生理用品を含む衛生用品を
「誰でも取りやすいが、目立ちすぎない」場所に常備しておきましょう。
4. 防寒・睡眠・休息のための用品
- 毛布・寝袋(1人1枚を目安に)
- アルミブランケット(保温シート)
- 簡易マット・段ボール(床冷え&硬さ対策)
- 使い捨てカイロ
- アイマスク・耳栓(明るさ・騒音対策)
ビジネスチェアやソファで一晩過ごすのは想像以上に負担が大きく、
腰痛や寝不足から業務継続に支障が出るケースもあります。
簡易マットや段ボールを組み合わせて、最低限横になれるスペースを確保しましょう。
5. 情報収集・連絡手段のための用品
- 携帯ラジオ(乾電池式または手回し式)
- モバイルバッテリー(大容量タイプを複数台)
- 充電ケーブル・変換アダプター(iPhone・Android両対応)
- 乾電池(単1〜単4、使う機器に合わせて)
- 多機能ライト(ライト+ラジオ+充電機能付きなど)
- 連絡網リスト(紙&デジタル両方で管理)
スマートフォンはライフラインそのものですが、停電時には電源確保が最大の課題になります。
モバイルバッテリーは人数分用意するのが理想ですが、
最低でもフロアごとに数台は常備しておきましょう。
6. オフィスならではの「あると安心」防災用品
- 救急箱・救急セット(常備薬・包帯・絆創膏など)
- メガホン・拡声器
- ブルーシート(床・机の保護、仕切り、目隠し用)
- ラップ・アルミホイル(食器代用、防寒、止血補助など多用途)
- 簡易パーテーション(着替え・授乳・休憩スペース用)
- 現金(小銭を含む)
- コピー書類(保険証、連絡先リスト、保険契約情報など)
従業員数から備蓄数量を算出する方法
基本の考え方:1人あたり3日分をベースに
一般的な目安は以下の通りです。
- 水:1人あたり 1日3リットル × 3日分 = 9リットル
- 食料:1人あたり 1日3食 × 3日分 = 9食
- 簡易トイレ:1人あたり 1日5回 × 3日分 = 15回分
- 毛布・寝袋:1人あたり1枚
- その他、防寒・衛生用品・医薬品は従業員数に応じて調整
モデルケース:従業員30名のオフィスの場合
- 水:9L × 30人 = 270L(2Lペットボトルなら約135本)
- 食料:9食 × 30人 = 270食(主食+副菜+おやつを組み合わせる)
- 簡易トイレ:15回分 × 30人 = 450回分
- 毛布・寝袋:30枚+予備数枚
- モバイルバッテリー:フロアごとに数台〜10台程度
数字にするとインパクトがありますが、
「少なすぎて足りない」より「少し多め」にしておく方が安心です。
防災用品の保管場所とオフィスレイアウトのポイント
分散備蓄で「取り出せないリスク」を減らす
どれだけ備蓄していても、倒壊や転倒、火災などで
倉庫に近づけないと意味がありません。
そのため、防災用品は次のように分散備蓄するのが理想です。
- 倉庫やバックヤードにメイン備蓄
- 各フロア・執務室にサブ備蓄(ヘルメット・水・非常食など)
- 受付・エントランス付近にメガホンや救急セットを配置
避難経路を意識したレイアウト
- 避難口・非常階段前には物を置かない
- 通路幅を確保し、段ボールなどの一時置き場にしない
- キャビネットやロッカーは通路側に倒れない向きで固定する
- 避難経路図を最新のレイアウトに合わせて更新する
在宅勤務・サテライトオフィス時代の防災備蓄
リモートワークが増えた現在、従業員の多くがオフィス外で働くケースも増えています。
その場合は、次のような考え方も有効です。
- 全従業員に「パーソナル防災セット」を支給する
- 在宅勤務者向けに「自宅備蓄チェックリスト」を配布する
- サテライトオフィスにも最低限の備蓄を配置する
防災用品の管理・運用ルール
賞味期限・使用期限をどう管理するか
防災用品の管理で一番多いのが、「気づいたら賞味期限切れ」問題です。
これを防ぐために、次のような仕組みを取り入れましょう。
- Excelやクラウドツールで「備蓄台帳」を作成する
- 賞味期限が近い食品は日常の社内イベントなどで消費し、随時入れ替える(ローリングストック)
- 点検のタイミングを「防災訓練」とセットで年1〜2回実施する
年間スケジュールの例
- 4月:新年度の防災担当者・体制を確認
- 6〜7月:水害・台風シーズン前の備蓄点検・レイアウト確認
- 9月:防災訓練+備蓄品の棚卸し・入れ替え
- 1月:冬場の防寒対策・暖房設備の確認
購入時のチェックポイント
- 企業・法人向け防災セットをうまく活用し、単品買いと組み合わせてコストを最適化する
- 防災士や専門業者のアドバイスを受けると、抜け漏れが減る
- 備蓄スペース・運搬のしやすさを考えて箱サイズや重量を選ぶ
オフィス防災用品導入のステップ
ステップ1:現状把握とリスク整理
- 現在の備蓄状況・数量・保管場所を把握する
- ビルの立地・階数・従業員数から想定されるリスクを洗い出す
- 災害時の優先順位(命の安全 → 水・食料 → 衛生 → 情報 → 事業継続)を明確にする
ステップ2:優先度の高いものから順にそろえる
- 命を守る用品(ヘルメット・転倒防止・ガラス飛散防止など)
- 水・食料・トイレなどライフライン系
- 防寒・睡眠・衛生用品
- 情報収集・電源確保のための機器類
- オフィスの特性に合わせた追加備品(医薬品、アレルギー対応食品など)
ステップ3:運用ルールと教育・訓練
- 防災用品の管理担当者・バックアップ担当を明確にする
- 社員向けに防災マニュアル・避難経路図を配布し、定期的に周知する
- 防災訓練で実際に防災用品の場所を確認してもらう
- 新入社員研修に「オフィス防災レクチャー」を組み込む
まとめ:オフィス防災用品は「コスト」ではなく「投資」
オフィスの防災用品・備蓄品は、いざというときに従業員の命と事業を守るための「保険」のような存在です。
災害が起きてから慌てて準備しても間に合いません。
まずは、今ある備蓄の棚卸しから始めてみましょう。
そして、「最低3日分」の水・食料・トイレ・防寒を目標に、少しずつでも不足分を埋めていく。
それだけでも、オフィスの防災力は着実に高まります。
「オフィス 防災 用品」の見直しは、従業員への最大の福利厚生でもあり、
企業としての社会的責任を果たす取り組みでもあります。今日から一歩ずつ、備えを進めていきましょう。
