「オフィスの間仕切り工事って、結局いくらかかるの?」という質問は、移転やレイアウト変更のタイミングで必ずと言っていいほど出てきます。同じように見える間仕切りでも、仕様や工事条件によって費用は大きく変わります。本記事では、オフィスの間仕切り費用の考え方から、種類別の相場、費用を抑えるポイントまで、まとめて解説します。

オフィスの間仕切り費用が大きく変わる3つの理由
まずは、「なぜ業者によって見積もりがバラバラなのか?」という根本的な部分から整理しておきましょう。オフィスの間仕切り費用が大きく変わる主な理由は、次の3つです。
- 間仕切りの種類(ローパーテーション/アルミ・スチール・ガラスパーテーション/造作壁 など)
- 仕様(長さ・高さ・ドアの有無・ガラスの有無・防音仕様など)
- 工事条件(夜間工事・入居中工事・設備移設の有無・ビルの規約など)
同じ「会議室を1室つくる」というケースでも、ローパーテーションで簡易的に囲うのか、天井までのスチールパーテーションにして防音を高めるのか、ガラスでデザイン性を重視するのかで、費用は数十万円単位で変わります。
オフィス間仕切りの種類と費用相場
ここからは、代表的な間仕切りの種類ごとに、特徴と費用の目安を整理していきます。
ローパーテーション(置き型)の特徴と費用相場
ローパーテーションは、床に置くだけで設置できる高さ1〜2m程度のパネルです。工事を伴わないため、導入しやすくレイアウト変更も簡単です。
- 高さ:おおよそ1,000〜1,800mm程度
- 用途:執務エリアのゾーニング、簡易的な打合せスペースなど
- 費用目安:1枚あたり約10,000〜30,000円前後+組立・設置費用
例えば、オフィスの一角に簡易打合せスペースをつくるために、ローパーテーションを10枚ほど設置する場合、ざっくり20〜40万円前後が初期費用のイメージです(枚数・サイズ・素材によって大きく変動します)。
ただし、天井まで仕切れないため、防音性やセキュリティが必要な会議室・応接室には不向きです。「視線をほどよく遮る」「ゆるくゾーニングしたい」といった用途に向いています。
施工型パーテーション(アルミ・スチール・ガラス)の費用相場
天井までしっかり立ち上げる施工型パーテーションは、会議室や個室ブース、役員室などでよく採用されます。代表的な種類と費用感は次のとおりです。
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アルミパーテーション
軽量で比較的リーズナブルなパーテーションです。パネル1枚あたりの材料費は、おおよそ12,000〜18,000円前後がひとつの目安とされています。
一般的な会議室1室分の規模になると、材料費+工事費を含めて数十万円台からのケースが多く、スチールやガラスと比べるとコスト重視向きです。 -
スチールパーテーション
遮音性・断熱性に優れ、高級感も出しやすいタイプです。パネル単価はアルミよりも高く、仕様にもよりますが1枚あたり20,000〜60,000円程度が目安とされます。
6〜8名程度の会議室を1室つくる場合、ドアやガラス部を含めたトータル費用は40〜70万円前後から検討されるケースが一般的です。 -
ガラスパーテーション
デザイン性が高く、光を通すため開放感のあるオフィスづくりに向いています。パネル費用は30,000〜100,000円/枚程度と幅がありますが、透明ガラスかスモークか、厚みや遮音性能によって大きく変わります。
同規模の会議室をガラスパーテーションで構成すると、スチールより高く、60〜100万円前後からのケースも一般的です。
施工型パーテーションは、「防音・デザイン・セキュリティ」をどこまで求めるかで費用が大きく変わります。見た目の印象だけで決めず、「何のための間仕切りか」を明確にして選ぶことが重要です。
造作壁(LGS壁)との費用比較
オフィスの間仕切りには、パーテーションだけでなく、軽量鉄骨と石膏ボードでつくる造作壁(LGS壁)という選択肢もあります。一般的な部屋(天井高約2.3m)で9mの間仕切りをつくるケースでは、クロス仕上げの造作壁が約13万円程度の材料費と言われる一方、アルミパーテーションは材料費だけで10万円強に加え施工費が必要となり、トータルではやや高くなる傾向があります。
- 造作壁のメリット:遮音性が高く、仕上材の自由度が高い/しっかりした「壁」になる
- 造作壁のデメリット:工期が長い/レイアウト変更時に撤去・復旧コストがかかる/原状回復の範囲が広くなりがち
- パーテーションのメリット:工期が短い/組み替え・移設がしやすい/原状回復が比較的容易
- パーテーションのデメリット:仕様によっては造作壁より費用が高くなる/遮音性や意匠性は仕様に左右される
長期的にレイアウトを変えない前提で、防音性を重視するなら造作壁、将来のレイアウト変更や原状回復コストも見据えるなら施工型パーテーション、という考え方が一つの基準になります。
オフィス間仕切り工事の費用内訳
見積書を見ると様々な項目が並びますが、大きく分けると次の3つに整理できます。
1. 材料費(パネル・ドア・枠・オプション)
材料費には、パネル本体・ドア・支柱・枠・ビス類などのほか、ガラスやホワイトボード、吸音パネルなどのオプションが含まれます。
- アルミパーテーションパネル:1枚あたり約12,000〜18,000円前後
- スチールパーテーションパネル:1枚あたり約20,000〜60,000円前後
- ガラスパーテーションパネル:1枚あたり約30,000〜100,000円前後
- ドア枠・ドア本体:仕様によって数万円〜10万円台
防音仕様、遮熱ガラス、デザイン性の高い仕上材などを選ぶほど、材料費はアップしていきます。
2. 施工費(人件費・搬入費・養生費など)
施工費は、職人さんの人件費・搬入の手間・既存家具の移動・床や壁の養生など、現場で発生するコストです。オフィス内装工事全体で見ると、間仕切りの設置は1坪あたり3万〜15万円程度が目安とされることもありますが、これは仕様や工事項目を含んだ「トータルの目安」です。
- 入居中で人や荷物が多い現場ほど、養生や搬入の手間が増え施工費も高くなりがち
- 夜間工事・休日工事の場合、割増料金が発生することが多い
- ビルのルールによって、エレベーターの使用制限・工事時間帯の制限がある場合も
3. 付帯工事・その他の費用
間仕切り工事と同時に発生しやすいのが、電気・空調・LANなどの付帯工事です。例えば、会議室を新設する場合には次のような項目が検討対象になります。
- 電源コンセント・照明スイッチの移設・増設
- 照明器具の追加・回路変更
- 空調吹き出し口の移設・増設
- LAN配線(有線回線・Wi-Fiアクセスポイント)の追加
- 消防設備(感知器)の移設・追加
こうした付帯工事を含めたトータルの計画を立てないと、「パーテーションは安かったのに、付帯工事の費用で予算オーバー」となるケースも多いため注意が必要です。
坪単価・㎡単価からざっくり予算を出す方法
細かな見積もりを取る前に、ざっくりとした予算感を掴みたいときは、坪単価・㎡単価で考えると整理しやすくなります。
- 間仕切りを設置したいエリアの面積(㎡)を出す
- その面積を3.3で割って「坪数」を把握する
- 仕様に応じて、おおよその坪単価を掛け合わせる
例えば、次のようなイメージです。
- 簡易なローパーテーション主体のゾーニング:3〜5万円/坪程度から
- 防音を考慮したスチールパーテーション会議室を含むレイアウト変更:8〜15万円/坪程度から
20坪のオフィスで、「会議室1室+簡易ゾーニング」を行う場合、20坪 × 5〜10万円 ≒ 100〜200万円が大まかな目安になります。もちろん、仕様・ビル条件・付帯工事の有無によって上下しますが、社内で予算の方向性を決める際のたたき台にはなります。
ケース別:よくあるオフィス間仕切り工事の費用イメージ
具体的なイメージを持っていただくために、よくある3つのケースを挙げてみます。
ケース1:6〜8名用の会議室を1室新設する
- 仕様例:スチールパーテーション(天井まで)+半分ガラス+ドア1枚
- 目的:防音性とセキュリティを確保した会議室
- 費用イメージ:40〜70万円前後(パーテーション本体+ドア+標準工事)
ここに、照明・空調・LAN・コンセントなどの工事が加わると、トータルでは60〜100万円前後になることも珍しくありません。ガラスの面積を減らし、パネル主体にすればコストダウンが可能ですが、その分、閉塞感が出るなどデザイン面とのバランスを考える必要があります。
ケース2:フリーアドレスエリアをローパーテーションでゾーニングする
- 仕様例:高さ1,400mm程度のローパーテーションを10〜20枚設置
- 目的:動線の整理・視線のコントロール・簡易的な集中スペースづくり
- 費用イメージ:20〜60万円前後(パネル+設置作業)
ローパーテーションは工事を伴わないため、費用を抑えつつオフィスの雰囲気を大きく変えられるのがメリットです。一方で、防音性やセキュリティには限界があるため、重要な会議や機密情報を扱うスペースには別の対策が必要です。
ケース3:受付・エントランスをガラス間仕切りで演出する
- 仕様例:床から天井までのガラスパーテーション+スチール枠+ガラスドア
- 目的:企業イメージを高めるエントランス空間の演出
- 費用イメージ:80〜150万円前後(仕様・面積により大きく変動)
ガラス間仕切りは、オフィスの「顔」となるエリアに投資する場合に選ばれることが多く、他の部分とのメリハリをつけることで、限られた予算の中でも効果的なブランディングが可能です。
オフィス間仕切りの選び方|費用と機能性のバランスを取るポイント
「とにかく安く」だけで選んでしまうと、使い始めてから「やっぱり防音が足りなかった」「後からレイアウト変更しづらい」といった後悔につながりがちです。費用と機能性のバランスを取るために、次の観点で検討してみてください。
防音・セキュリティを重視する場合
- スチールパーテーションや造作壁を候補に入れる
- ドア部分にパッキンやドアクローザーを付けて隙間を減らす
- 天井裏の音漏れ対策(吸音材の追加など)もセットで検討する
- ガラスを使う場合は、フィルム貼りやすりガラスで視線をコントロール
「オンライン会議が外まで丸聞こえで困っている」「機密情報を扱う部屋が欲しい」といった場合は、最初から防音を意識した仕様にしておく方が、長期的にはコストパフォーマンスが高くなります。
レイアウト変更のしやすさを重視する場合
- 組み替えや移設がしやすいアルミパーテーションやローパーテーションを選ぶ
- 造作壁は最小限に抑え、パーテーションで柔軟性を持たせる
- 将来の増員・部署構成の変更を想定したゾーニングを設計する
フリーアドレス化が進んでいるオフィスでは、「今の働き方」が数年後も続いているとは限りません。初期費用だけでなく、将来のレイアウト変更コストまで考えるのがおすすめです。
デザイン・ブランディングを重視する場合
- ガラスパーテーションや、造作壁+アクセントカラーで印象をつくる
- 受付・エントランス・会議室など「見せ場」に予算を集中させる
- ロゴカラーやブランドイメージに合う色・素材を選ぶ
全てを高級仕様にするのではなく、来客の目に触れる部分に重点的に投資し、バックヤードや倉庫エリアはコスト重視にするなど、メリハリをつけると総額を抑えやすくなります。
見積もりを取る前に整理しておきたいチェックリスト
業者に見積もりを依頼する前に、社内で次のポイントを整理しておくと、話がスムーズに進み、ムダな費用も抑えやすくなります。
- 間仕切りの目的(防音/視線カット/セキュリティ/デザイン など)
- 完成希望時期(いつまでに使える状態にしたいか)
- 予算の上限(ざっくりでいいので「これ以上は難しい」というライン)
- 希望レイアウト(簡単な手書き図や現状の平面図があるとベスト)
- 希望の仕様(ローパーテーションか、天井までのパーテーションか、ガラスをどの程度使いたいか)
- 電気・空調・ネットワークの要望(コンセント数、照明の明るさ、LANの場所など)
- 工事可能な時間帯(営業時間内か、夜間・休日のみか)
- ビル側のルール(工事申請の必要有無、指定業者の有無、騒音の制限など)
できれば、2〜3社から相見積もりを取り、「価格だけでなく提案内容」も比較するのが理想です。同じ予算でも、レイアウトや素材の選び方次第で、使い勝手やオフィスの印象は大きく変わります。
まとめ:オフィスの間仕切り費用を“コスト”ではなく“投資”にする
オフィスの間仕切り費用は、種類・仕様・工事条件によって大きく変わるため、一概に「いくら」とは言えません。ただし、本記事でご紹介したような相場感と考え方を押さえておけば、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
- ローパーテーションは導入しやすい反面、防音性・セキュリティには限界がある
- 施工型パーテーションは、防音・デザイン・セキュリティのバランスで仕様を選ぶことが重要
- 造作壁は遮音性・仕上げ自由度に優れるが、レイアウト変更や原状回復コストが大きい
- 付帯工事(電気・空調・LANなど)も含めた「トータルコスト」で比較する
- 目的・予算・工期を整理したうえで、複数社から提案をもらうと失敗しにくい
オフィスの間仕切りは、単なる「壁」ではなく、働き方や生産性、企業イメージにも直結する大切な要素です。費用だけにとらわれず、「どんな働き方を実現したいのか」という視点から、最適な間仕切り計画を検討してみてください。
